第9回 安倍内閣の外国人労働者受入れ拡大策に断固反対する! 

改めてもう一度、中国は危険な思想を持っているということを確認せよ

 筆者は「トークライブ」でも再三、強調したが、これは「外国人問題」というより「中国人問題」である。その理由は前段で述べた。
 もう一点、「トークライブ」で強調したことがある。筆者は、民族としての中国人を問題視しているわけではない。例えば、横浜、神戸、長崎などには戦前から華僑と呼ばれる中国人が「中華街」をつくり、われわれ日本人と平和に共存してきている。筆者は、これら華僑の人々についてはなんの懸念も抱いていない。
 筆者が懸念しているのは、西暦2000年頃から急激に日本に流入してきている「ニューカマー」と言われる中国人で、いまやそれが在日中国人社会の主流を占めている。それは、在日中国人の年齢構成を見ると明らかで、年齢ピラミッドをつくってみると、最多が20歳代の約25万人、次が30歳代の約17万人で、40歳代以下で9割を占めている(図参照)。
 少子高齢化が進む日本とは裏腹に、在日中国人社会は若者中心となっている。明らかにこれは戦前から日本で暮らしてきた華僑の人々の子孫ではなく、近年、中華人民共和国から新規に流入してきた若い中国人である。それが既に圧倒的多数となっているのだから、いかに急激に流入しているかがわかる。
 問題は、この若い世代の中国人たちが、本国で反日教育を叩き込まれて来日してきていることである。
 中国共産党による反日教育は戦後一貫して行われてきたわけではない。江沢民政権が発足して五年目の1994年に、中国共産党中央宣伝部が「愛国主義教育実施要綱」を通達した前後から本格化した。
 筆者は、1990年から93年にかけて足かけ四年、北京に住んでいたが、その間、中国の当局者たちとの会話で、歴史認識や戦争責任が話題になったことは一度もなかった。一般庶民からも憎悪や反感を示されたこともない。
 なぜなら、反日教育はまだ本格化していなかったからだ。当時の中国は、1989年の天安門大虐殺事件で世界から孤立しており、中国に対して脇が甘い日本政府や財界の支援にまだ頼らざるを得ないという弱みがあったからだ。
 平成4年(1992年)に今上陛下の御訪中が、河野談話を出した史上最悪の売国政権・宮沢内閣の画策で実現してしまった。不幸にも、このことが一つのきっかけで中国の「みそぎ」が国際社会で承認されたかたちとなり、欧米諸国が対中経済制裁を緩和し始め、沿岸部の経済特区や開発区に投資を再開し始めた。宮沢・河野は、韓国だけでなく中国にも政治利用されたのだ。
 日本に依存する必要がなくなった中国は、平成10年(1998年)、江沢民が来日した際、宮中晩餐会で外交礼譲を無視して「歴史認識」について一方的に演説し、現在も続く対日歴史戦の火ぶたを放ったのだ。
 従って、反日教育にどっぷりつかって育ったのは、1994年当時20歳以下だった世代、つまり現在40歳未満の中国人で、これが目下、在日中国人社会でも最大勢力となっているのである。
 中国は「国防動員法」を2010年に施行した。これは一旦有事には、在外中国人も中国政府の動員対象とすることに法的根拠を与えた「国防勤務」を免除されるのは病人、妊娠、医療従事者、国連などに在籍中の職員のみで、日本にいる技能実習生や留学生などはもちろん、永住者や定住者も含め、健康な成人男女なら動員を免れない。
 さらに中国は、日本に送り出す技能実習生に本国で軍事教練をほどこしていることも公知の事実である。例えば、朝日新聞は2010年4月26日に、中国雲南省で迷彩服を着て日本式のお辞儀の練習をさせられる中国人実習生たちの様子を写真入りで報道している。
 また、『ネットと在日』の著者として知られる安田浩一氏は、『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)の第一章の冒頭で、中国河南省で日本企業へ研修生(当時の呼称。現在は技能実習生)を送り出すための職業訓練施設を訪れた際、軍事教練が行われているのを目撃したことを写真入りでルポしている。
 筆者が問題視しているのは、中国人の民族性ではなく、中国という異常な体制の国家の国策・国家戦略である。「中国人は帰れ」とか「中国人を排斥せよ」などという幼い低劣なことは一度も書いたことがない。

長野での惨劇を思い出せ

 これは政策論議なのだ。中国共産党・中華人民共和国の特異な国策、非軍事的手段による「超限戦」にどう対峙するのか、我が国も国家として備えるべきだと言っているのだ(詳しくは拙著『中国を拒否できない日本』(ちくま新書)を参照願いたい)。
 もし将来、我が国が中国と決定的な対立を余儀なくされたとき、約70万人(20歳代だけでも25万人!)の在日中国人は、中国政府の命令一つで一斉蜂起するわけである。それは近未来の仮想現実ではなく、我が国国内で既に一度、現実に起きている。
 2008年、北京オリンピックに際して長野市で行われた「トーチリレー」のときだ。在京中国大使館は、日本の各大学に張り巡らせた「学友会」という細胞組織を通じて留学生を中心とした在日中国人に動員をかけ、一夜にして長野市に結集させた。その数は四千人とも六千人ともいわれ、巨大な五星紅旗を林立させて我々日本人を威嚇した。
 日本国内において、外国政府による自国民の大衆動員が公然と行われたのは、史上初めてだろう。
 日本文化チャンネル桜が手配したバスに乗り、水間政憲氏や三輪和雄氏らとともに筆者もこの日、長野に赴いた。我々の一行は中国人暴徒に襲われ、警察官の面前で仲間が暴行を受けたが、現場にいた警察官たちは中国人の現行犯を逮捕しなかった
 日本の領土、主権下にありながら、数千人の中国人に包囲され、威嚇され、暴行され、日本の警察もそれを阻止できないという無法状態。
 その異様な光景、不条理な恐怖は、経験した者でなければわからないだろう。(続く)
在日中国人の年齢別内訳 (2013年)

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西部邁

関岡英之

関岡英之評論家・ノンフィクション作家

投稿者プロフィール

昭和36年6月、東京生まれ。
昭和59年3月、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業。
 同 年4月、 東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行、約14年間勤務後、退職。
平成13年3月、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、著述活動に入る。

主な著書:田母神俊雄氏と共著『日本は「戦後」を脱却できるか 真の自主独立のために』祥伝社 平成26年
     三橋貴明氏と共著『検証・アベノミクスとTPP 安倍政権は「強い日本」を取り戻せるか』廣済堂出版  平成25年
     中野剛志氏編『TPP黒い条約』 集英社新書       平成25年
     『国家の存亡 「平成の開国」が日本を亡ぼす』PHP新書       平成23年
     『中国を拒否できない日本』     ちくま新書       平成23年
     『帝国陸軍見果てぬ「防共回廊」』祥伝社         平成22年
     『奪われる日本』         講談社現代新書     平成18年
     『拒否できない日本』       文春新書        平成16年
     『なんじ自身のために泣け』(第7回「蓮如賞」受賞)河出書房  平成14年

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