トランプの超積極財政に市場は好意的だったことに注目しよう
- 2016/11/29
- 社会, 経済
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※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
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もし、トランプ氏が大統領選で勝つようなことがあれば(もしトラ)、株は暴落するだろうと思われていて、実際株価は1000円程度下落したのだが、翌日には元に戻り、その後は上昇気味である。予想外の株価の上昇はトランプ氏の積極財政政策である。10年間で640兆円の減税、法人税率を35%から15%に引き下げ、高速道路、橋、トンネル、空港、学校、病院などインフラを整備し、大学の授業料の引き下げ、米陸軍の規模を48万人から54万人へ増強する。
そんな巨額の財源があるわけがないから財政は大赤字になるということで、米国のみならずドイツ、日本等の金利まで上昇した。異常だったマイナス金利を解消し正常化に向かったと言えるかもしれない。我々日本経済復活の会は政府に積極財政に政策転換するよう提言を繰り返してきた。いつも政府から返って来た答弁書には「財政が厳しい。通貨の信認が失われる恐れがある。」とあり、積極財政には応じない。よく一般に言われるのは「国債が暴落する」や「ハイパーインフレになる」である。
ハイパーインフレに関しては、政府からの答弁書で「極度の物不足でないと起こらないから現在の日本では起こらない」とされた。日銀は長期国債の金利を0%程度に誘導するという方針が示されたので、金利の暴騰を意味する国債の暴落もあり得ないこととなった。通貨の信認に関しては、トランプの超積極財政でもドルは信認を失うどころかドル高が進んでいる。
もちろん、米国は現在景気は悪くない。むしろ過熱を恐れていて、FRBは徐々に金利を上げてバブルになるのを抑えようとしているところであるから、トランプの超積極財政は批判を受けてもおかしくないくらいだ。それに対して日本はデフレ経済がすでに20年位続いている。インフレは恐れるどころか政府は2%のインフレを目標に悪戦苦闘しているところだ。その意味でトランプに見倣って積極財政を行って欲しいし、積極財政を否定する理由は何もなくなった。
さてトランプの経済政策だが、積極財政だけならよかったのだが、保護貿易という時代遅れのオマケがついている。彼はNAFTAなどの自由貿易協定が米国の製造業を破壊したと主張する。ウイスコンシン、ミシガン、アイオワなどの製造業はメキシコなどに工場を移したから、それを取り戻す為にメキシコからの輸入品に35%の関税をかけるという。しかし、儲けの少ない部門はメキシコに移し、利益率の高い部門だけ米国に残したというのが現実だ。
もし高い関税の壁を作ったら、米国製品の競争力が失われ米国製品が売れなくなり、米国の消費者は高い製品を買わされることとなる。
かつて米国は大失敗をしている。1930年フーバー大統領は「どのガレージにも車2台を!」をスローガンにし、スムート・ホーリー法を定め、保護貿易政策を採り関税を大幅に引き上げた。これにはアメリカ経済学会から10日で1028名の経済学者の反対署名が集まった。「高関税はわが国の人々を傷つける。外国は、わが国に物を売ることができなければ、わが国から物を買うことができない」と訴えた。
米国の保護貿易政策に対抗し、ただちにヨーロッパ諸国から報復措置が返され、世界貿易は衰退の一途をたどり、結果として第二次世界大戦へと向かっていった。保護貿易政策は米国経済だけでなく、世界経済に甚大な損害を与えてしまう。自由貿易の上に築かれた世界経済を根底から破壊するトランプの構想がまさか実現するとは思えないが、我々の暮らしを破壊する極めて危険な考えであることだけは理解しておくべきだ。
小野盛司
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