フラッシュバック 90s【Report.32】1990年代後半を語る作法について(破)

不可逆性がなくなった時代

本来、テレビの中の作り物の世界と自らの現実というのは不可逆、行き来することが不可能なはずでしたが、95年以降は、もはや、テレビの向こうは現実の延長線上であり、アニメの世界ですら、要素分解すれば、自らをアニメの世界の文脈に置くことができる状態になりました。

つまり、不可逆性がなくなってしまったというわけです。

そうすると、自分と目の前にいる他人との違いが何なのか、わからんくなってしまいます。本来、不可逆であるべきものが次々と可逆なものへと変わっていくと人々はその拠り所を失っていきます。ある意味、いじめ問題や過剰に人権を叫ぶ団体、 それに対抗するヘイトスピーチと相手を自分と「違う」と決め付ける運動の根本には、こういった不可逆性の喪失があるといえるでしょう。

90年代を語る上での作法破

ここまで、95年以降のテレビの崩壊と人々の現実の捉え方について述べてきましたが、破でのまとめは、「不可逆性の崩壊」につきます。

「あなた」と「わたし」を分けているものは一体何なんでしょうか?

80年代までは、住んでいる地域や見につけているブランド、余暇の過ごし方などで自らを装飾し、「あなた」との差異化をはかっていたかもしれません。95年以降になると、デフレの時代に入り、誰しもが多様な趣向を選べる時代ではなくなり、100均で全てを済ませるような人物も出てくるわけです。

そうすると、「わたし」が確立されることよりも、「あなた」とは違うということだけが問題になってきます。こうして、不可逆性が崩壊した時代においては、根本的に、人間同士が関係性を作っていくことが難しくなっていくわけです。


※第33回「フラッシュバック 90s【Report.33】1990年代後半を語る作法について(急)」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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