TPPは中国包囲網にあらず!!~包囲されたのは日本だった?!~

TPPは大筋合意、でも肝心の中身は?

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する12か国は5日朝(日本時間5日夜)、共同記者会見を開き、交渉が大筋合意に達したとする声明を発表しました。今後は、各国が国会での批准作業に入ります。

しかし、ここで問題になるのは、TPPが基本的に秘密交渉であるという点です。TPP交渉では、交渉内容を公表しない合意があり、交渉文書は協定発効後4年間秘匿されることが、ニュージーランドのTPP首席交渉官の発表で分かっています。果たして、内容が分からないような貿易協定に関して、一体、どのようにして国会での承認を行うというのでしょうか?

「内容が分からないのに反対するな!!」論の愚

TPP賛成派の中には、このような秘密交渉でその内容が分からないという事実を盾にとって「内容が分かっていないのに反対している反対派はオカシイ!!」という暴論を吐く人もいるのですが、このような論は全く間違っているといえるでしょう。月々の支払いがいくらになるかも、どのような範囲をカバーしていて、いくらまで補償してくれるのかも分からないような保険に入る人がいるでしょうか?どこに建っていて、いくらの価格で、どのような間取りで、何年間のローンであるかも分からないまま住宅などを購入する人がいるでしょうか?

要は、中身が分からないという事実は、賛成する論拠とはなりえませんが、反対する論拠としては十分であるということです。つまり、「中身が分からないのに賛成してる奴はおかしい!!」は主張として正当性を持ちますが、一見同様のロジックであるように思える「中身が分からないのに反対する奴はおかしい!!」という主張は、暴論であると言うことが出来ます。

中国を包囲するつもりが、いつの間にか自国が包囲されていた?!

このTPPは参加国の批准手続きが2年以内に終わらない場合、12カ国の国内総生産(GDP)の合計の85%以上を占める6カ国が手続きを終えれば発効できるという規定で合意しており、12カ国のGDPで日米が占める割合は約8割で、最低でもこの2カ国が手続きを終えないと発効できない仕組みとなっているそうですが、これは完全に日本に対する圧力です。つまり、日本に対して、「お前たちが批准しなければ、TPPは発行できなくなり、これまで交渉参加国が行ってきた5年間の交渉努力がすべて無駄になるのだぞ」と迫ることで日本をTPPの協定から抜けられなくしてしまったワケですね。最も、日本国内ではTPPに関して非常に楽観的な見通しが強く、日本がわざわざTPPの批准を議会で否決するなんてことは万に一つもなさそうですが。

しかし、重要なことは、アメリカはわざわざここまで周到に日本に批准を迫っているということです。これまで、主に保守陣営のTPP賛成論者の多くが「TPPは中国包囲網だ!!」と語ってきましたが、実際には、包囲されたのは中国ではなく、日本だったという笑えないオチです。

→ 次ページ「唯一の戦果である自動車も日本に有利にはなりません」を読む

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西部邁

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