TPPは問題だらけ?~TPP問題をめぐる高橋洋一氏のデマを斬る!!~中編

じゃあ、どうやって日本の保険制度は壊れるの?

では、一体、どうやって日本の保険制度は壊れていくのでしょうか?これについて考えるためには、逆にアメリカの企業や投資家側からものを考える必要があります。アメリカの保険会社は日本の保険市場に入りたいと思っていますが、ガン保険等一部の保険を除いてなかなか思うように日本の保険市場に参加できないのが現状です。そこで障害になっているのは、当然日本の質の高い公的保険制度です。

つまり、日本では民間の保険サービスのほかに質の高い公的保険制度が用意されているため「この保険制度こそが我々民間の保険会社が日本の保険市場に思うように参入できない原因を作っている参入障壁だ!!」と企業や投資家は考えます。

しかし、先に述べたように、この国民皆保険制度は憲法25条によって定められた権利に基づいており、これを直接的に破壊することは困難です。であれば、どうするか?答えは簡単で、アメリカの保険業界のロビイスト達は出来る限りこの保険制度を形骸化させようと狙ってきます。

例えば、現在日本国民の医療費の負担は公的保険制度により3割負担に抑えられていますが、これが4割負担、5割負担と増えていったらどうでしょう?こうなると、これまで「3割負担だから、民間の保険会社に入らなくてもいいや」と思っていた人も、少し不安になって「やっぱり民間の保険会社にも入っておこうか?」と思うのではないでしょうか?

ここまで読んでくれた方の中には、「今後医療費が5割負担になることなんてありえない!!」と思う方もいるかもしれません。しかし、過去かの敬意を考えると、医療費は1割負担が2割負担となり、さらに現在では3割負担となっています。今後も、ますます財政は悪化し、高齢化で医療費負担が増加していく中で、例えば20年後、30年後に、「医療費負担が4割になります」「5割になります」と宣告されたとき、日本国民は(多少の抵抗はあれど)案外すんなり受け入れてしまうのではないでしょうか?

そうなれば、日本の公的保険制度は形骸化し、外国の保険会社が日本市場に参入するための絶好の機会となります。

じわじわと時間をかけて制度は破壊されます

一応、高橋洋一氏を多少なりとも擁護するとしたら、確かに、日本がTPPに入ることで、突然アメリカと同程度に医療費や保険の料金が高騰することはないでしょう。しかし、アメリカの企業群や投資家はじっくりと時間をかけて日本の制度を改変しようとしてきます。

例えば、食料品の関税などは典型的で、どんどん関税が引き下げられると同時に、国内で整備された様々な食糧の安全性を高めるようなルールもどんどん破壊されていっています(遺伝子組み換え作物の表示義務、狂牛病の対策 等々)。こういった国民の安全や健康を守るための制度は言うまでもなく、国家の主権の領域です、また見方を変えれば、様々な安全基準のルールを自分たちで決めていくという意味では民主主義でもあります。

つまり、「TPPは主権侵害である」という主張は、このような自分たちの国家のルールを自分たちの意志や政治的判断で決定することが不可能になるということであり。また、それは国内の民主主義的な意思決定プロセスの破壊でもあります。

要は、右派であれば、国家主権を守るため、左派であれば民主主義を守るためという意味で、TPPに反対することには大義が存在しているのです。

この意味で、「TPPに反対するか否か?」という問題は、「右派か左派か?」といった政治的イデオロギー的対立ではなく、「真面目に物事を考えているか、ふざけて物事を考えているか?」という問題であるように私には思えます。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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