このブログの読者なら、釈迦に説法ということになるでしょうが、消費増税がなぜ間違いなのかを、この際おさらいしておきましょう。
この間の消費税増税の動きは、このままでは「国の借金」が膨らんで財政破綻するから税収増で補填する必要があるという、財務省の理屈に基づくものです。「国の借金」とは、正確には政府の負債(国債)ですが、この債権者は95%が日本国民ですから、つまりほとんどが日本国民の財産だということになります。
しかも円建てですから財政破綻の恐れなどまったくありません。たとえばギリシャのように、ユーロ建てで債権者の多くが外国の投資家だったら、いくらでも売り逃げされて暴落する危険があるわけです(現にそうなりました)。しかし日本国債の場合、通貨発行権を持つ日銀が買い取れば、政府との間で連結決算によってチャラにできますから、いくらでも減らすことができます(現に異次元金融緩和ですでに大きく減っています。そのことも財務省はけっしてアナウンスしません)。
また政府は負債ばかりでなく流用可能な莫大な資産も持っています。およそ、政府の資産状態を示すのに、負債の大きさだけを宣伝して手持ち資産のことについては何も言わないというのは、小学生でもわかるおかしな話です。ここに財務省の国民だましの意図が如実に表れています。つまり増税の必要などまったくないのです。
また、そもそもデフレ不況時に増税や緊縮策などを取れば、消費や投資がますます縮退することは明らかです。現に前回の増税の影響で、実質GDPは大きく落ち込み、今年4~6月期の成長率の確報値は、年率換算で1.2%のマイナスを記録しました。
ちなみに少し古いですが、1997年を100とした2009年までの先進各国の名目GDPの指数を掲げておきます。
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20100418/1271591592
ついでに、1987年を100としたこの33年間における日、英、米、スウェーデンの名目GDPの指数も掲げておきましょう。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-122.html
もちろん現在もこの状態は進行中です。
この間、政府は有効な財政政策をなんら打たず、財務省の緊縮財政路線に唯々諾々と従ってきました。本来ならこの結果に鑑みて、最低でも10兆円、最大20兆円ほどの補正予算措置を直ちに講じて、大幅な財政出動に打って出るべきなのですが、長年続いた公共投資、公共事業アレルギーに政府は骨の髄まで毒されているので、「補正予算は考えていない」などと平気でのたまっています。つまりこれは、アベノミクスの第二の矢は、もう放つ気がないと告白しているのと同じです。
このような悲惨な状態にもかかわらず、日銀は、9月15日の金融政策決定会合で、相も変わらず「国内は緩やかな回復を続けている」との判断を維持し、この間の日本経済の縮退の原因を、消費増税をはじめとした国の財政政策の誤りに求めず、「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられる」などと、他国になすりつけています。
また黒田日銀総裁は、この間の中国を中心とした新興国経済の減速に対しては、「先進国の成長が続き、好影響が波及して新興国は減速から脱する」などと超楽観的な見方を示しています。おいおい、その先進国の一つである肝心の日本はどうなんだ、と言いたくなりますね。
新興国経済が減速すれば(もうしていますが)、当然それは先進国経済を直撃します。FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げをめぐって、世界銀行は15日、新興国の成長率が今後2年間で7%落ち込む恐れがあるとの報告書を発表し、一部の新興国(おそらく中国のことでしょう)は「完全な嵐」に見舞われるかもしれないと警告しています。IMFのラガルド専務理事も、FRBに慎重な判断を求めています。(以上日銀発表と世銀報告に関しては、産経新聞9月16日付)
これに比べてまあ日本の政府及び日銀のノーテンキぶりはどうでしょう。
ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、「いま日本では消費税をさらに10%に上げるような話が議論されています。そんなものは、当然やるべきでない政策です。もし安倍政権がゴーサインを出せば、これまでやってきたすべての努力が水泡に帰するでしょう。日本経済はデフレ不況に逆戻りし、そこから再び浮上するのはほとんど不可能なほどの惨状となるのです。」と深刻な警告を発しています。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40411?page=4
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