今、台湾どうなってるの?台湾事情通がすっきり解説
- 2014/11/17
- 国際, 社会
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ザ・既得権益勢力VS理想の台湾を語る人
そんなこんなで揺れている台湾社会を診て、柯Pこと柯文哲は台北市長選に立候補したのだ。「政治は素人だ」と自ら言いながら、「藍・緑対立から脱却し、台湾の未来のために協力を」「市民参加の政治を」と呼びかけ、政策を打ち出してきた。
その対抗馬、国民党の連勝文は、柯文哲より11歳若い44歳。
彼も政治家の経験はないが、有力な政治家だった父親の背中を見て育っている。副総統まで務めた父親の連戦は、さまざまな役職を経るうちに、いつのまにか200億元(700億円)以上ともいわれる財産を築いた才能の持ち主だ。
もともと台北市は国民党が強い。それに、長年台湾の政権を担ってきたという国民党の組織力は盤石のものがある。加えて連家の潤沢な選挙資金があれば、無所属の柯文哲によもや負けることはあるまい、と思われていた。
しかし、選挙が近づいてくると、民意調査では無所属の柯文哲がリードするのである。たとえば台湾のテレビ局TVBSの10月下旬の調査では、連が32ポイントに対して、柯は47ポイントと10ポイント以上もリードしているのだ。新聞や各種報道機関の調査でもこれは大同小異。国民党系のメディアの調査でも同じである。しかも、年齢別にみると、20歳代では連の16に対して、柯は64と圧倒的である。
柯文哲の「藍緑からの脱却」と「市民参加の政治」は、若い世代にこそ支持されたといえるのではないか。
また、これらの調査から見て、いままで国民党を支持してきた人々の10~15%は柯文哲支持に回ったと考えられている。
それで焦ったのが、1人は連勝文の選挙参謀で国民党立法委員(国会議員)の蔡正元だ。彼はこの選挙を評して「新台北人と旧日本人との戦い」と言った。新台北人は、相対的に若くて台北生まれの連勝文、旧日本人とは柯文哲。さて、その心は? 報道によれば、「柯文哲は日本家庭の出身だ。柯の祖父が日本の役人官員だから。日本の役人の精神といえば、たいそう女性を蔑視している」と蔡は語ったという。この発言は、柯文哲の著書『白色的力量(白いパワー)』の中に「一夫多妻は人口を増やすための比較的有効な手段」などといった記述があり、これが女性蔑視だと連勝文陣営が柯文哲を攻撃していることを受けてのものだ。
もう1人は、連勝文の父親・連戦だ。11月8日、連戦は退職公務員の連勝文後援会に出席し、連勝文への支持に勢いをつけようと演説した。その後も、国民党支持者の選挙応援集会に出てさらなる支持を乞うている。
人々に飽きられた既存の政治
さて、国民党の政治の特徴はといえば、「家族政治」だといわれている。中国の政党政治の特徴と言ってもいいかもしれない。味方は家族として手厚く扱うが、いったん敵となれば容赦しないといったところだろうか。
連勝文陣営は、先の「女性蔑視」攻撃のように、新聞などのメディアを使ってさまざまに柯文哲を攻撃しているが、こうした敵への攻撃の手法は国民党の伝統的なものといってもいいかもしれない。
一方の柯文哲は、相手に財産や選挙費用は公開しろと求めたりするものの、攻撃らしいことはしていない。
また、戦後、中国大陸から台湾へと渡ってきた国民党は、数の上では少数派。そこで、軍人、公務員、教員等を味方につけておこうと手厚く待遇した。彼らへの年金は、引退後も現役時代と変わらないような金額を逝去するまで払うというものだった。それは、さすがに財政への大きな負荷となり、近年額が切り下げられたが、それでもまだ多い。反面、一般の勤め人には年金制度そのものが不備で、公務員らとの受給金額の差は年間で10倍以上の開きがある。
父・連戦が長男の応援のために、まず退職公務員の集会に出たことは、「親ばか」であると同時に、旧態依然の国民党の体質を示したようなぐあいだ。
では、若い連勝文はどうかといえば、冒頭で述べたテレビ討論会で、連勝文は若い層からの支持が少ないことを意識して、若い層の雇用創出への方策を語ったあと、もしそれでも就職できないなら、「月に6000元(約2万円)」を援助すると言ったのである。柯文哲も連勝文も市政の理想を語るといったスピーチで、ここだけがやけに具体的な案だった。連勝文は、結局のところ、金で若い層を釣っているのだ。
こうした国民党の場当たり的な体質は、若い層にはよく見透かされている。それ故に、政治の素人と自称する、無所属の柯文哲に支持が集まる一因ともなっている。
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