なぜ、都知事選で家入一真は惨敗したのか?~ネットリベラルと左翼の共通の陥穽について~
- 2014/2/26
- 政治
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今月9日に行われた都知事選ですが、主要候補として舛添要一候補、宇都宮健児候補、細川護熙候補、田母神俊雄候補の4候補が争いました。そして、次点としてネット系のビジネスを手がける若手実業家の家入一真候補が主要候補についで5位となりました。
今回の都知事選ですが、脱原発派候補であった宇都宮、細川両候補の敗北。さまざまな団体の支持を得て当選したと言われる舛添候補の勝利。そして、ネットを中心とした保守系の若者の支持を得て躍進した田母神候補とさまざまな点が注目を集めました。
しかし、今回はあえて、この家入一真に焦点を当てて解説してみたいと思います。なぜなら、この家入候補や、彼をとりまく周囲の左派的知識人の発言から、これからのネットと政治の関係や、あるいは現代の左派言論人の抱える問題点の一部を見て取ることが可能であるからです。
家入一真候補の読み違い
リベラルの代表的な論客である宇野常寛氏は、若者の保守層から強い支持を受けた田母神候補が躍進し、一方でネットを中心とした若手のリベラル層から支持を受けるはずだった家入候補が大敗した今回の都知事選の結果を受けて、「若者に届かぬリベラル」と論評しました。つまりは、ネットリベラルの敗北です。
田母神俊雄候補:61万865票。家入一真候補:8万8936票。
それまで、政治になんの関係もない実業家であった家入候補が突如都知事選に出馬したという経緯を考えれば、この程度の得票数は妥当であると思えますが、一方で、同じくインターネット上での支持に多くの票を求めた初出馬の田母神候補が実際に61万票を獲得したことを考えるなら、結果としてみれば、やはりネットリベラルの敗北という表現もまた妥当であると言えるでしょう。
家入候補は、ネットをよく使う若手の層の支持を期待したのでしょうが、予想していたほどには、そういった層からも支持を得ることが出来ませんでした。
この原因について、マーケティングアナリストであり、現代の若者の消費傾向を分析した『ヤンキー経済』を上梓した原田曜平氏は、次のように分析しています。
(原田氏の分類したヤンキー世代の若者に受ける政策は何か?という質問に対して)
なんでしょうねぇ、家入さんお友達なんですけど、家入さんはこう頭の良い子達の支持をすごく集めた気がしてこういうマイルドヤンキーの子達はよく分からないと思うんですよ。彼らに受ける政策ってなんなんでしょうね?(地元に)イオンを1個増やすとか?(笑)ディズニーランドに行きやすいとか、ディズニーランドに安く行けるとか。あと、やっぱり子供に対する愛というがすごく意識が強いので、まあ子ども手当かなんなのか分からないですけど、やっぱり家族の関係ってのは彼らにとって地元の一番ハブになるところなのでそこにやっぱり恩恵を感じられるとすごく良いんじゃないかなという気がしますね。
だから、家入さんはすごく「居場所」って話をされてまして、それはそれで、すごく大切なことなんですけど、彼らはもう居場所はあるんですね。居場所をよりどう快適にしていくかってことのほうが彼らはより関心が強いんじゃないかなという気がします。
(『ヤンキー経済』原田曜平さんライブトーク@ふらっとすぽっと!)
原田氏は、現在の若者に関して、内向きで地元志向、政治や世界情勢についての関心よりは、むしろ自分たちの仲間内でどう楽しく快適に過ごせるかということを重視する現在の若者、つまりホリエモンや楽天の三木谷氏といったベンチャービジネスを成功させた若手の起業家たちの活躍を見て、「自分たちも、いつか成功するのだ!!」という野心を滾らせていた若者たちの次の世代の若者たちを指してマイルドヤンキー世代と名づけました。
彼らは、引きこもりでもないけれど、かといって成功への野心を燃えたぎらせるでもない。ネットでなんでも済ましていつもひとりでPCの前で過ごすでもなく、適当にネットをやって、適当に仲のいい友達とつるんで、適当に近くにいる異性と恋愛をする。そんな現在のマジョリティーである普通の若者達からいまいち家入一真は支持を得られなかったのではないか?とそのように分析するわけです。
つまり、家入氏は、居場所のない現在の若者たちを想定し、「居場所つくり」あるいは「やさしい革命」なるものを提唱しましたが、意外にも、本当にどこにも居場所のない孤独な若者というのは少数派であって、実際には多くの若者は自分なりのそこそこに快適な居場所を確保していたということです。
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2コメント
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2014年 7月 04日
なぜ家入氏が惨敗したか。
それは知名度不足、支援組織の欠如尽が主な原因ではないのでしょうか。
その上で5位になったのはなぜかと考えれば、松田馨という選挙プランナーが入ったお陰で新聞に家入が掲載されたり、イメージの良いポスターが出来上がったこと。ホリエモンがついたことなど、広報戦略が他の泡沫候補に比べ優れていたことが主な理由ではないでしょうか。
逆に選挙プランナーやホリエモンがつかなかったらポスターも貼られていない、新聞に載らないという事態になった上、さらなる惨敗を喫したと思います。
思想、政策、主張といったところで判断するにはまずその人を知るという前提が不可欠です。
つまり選挙の結果を考える上では広報戦略がいかがなるものだったかを考える必要があると思います。
文章を否定するわけではありませんが、家入がなぜ惨敗したのかというタイトルをつけるのであれば、その点についても触れるべきだと思いました。
はい、たしかに、ホリエモンのような著名人からの支援を受けたことや、他の泡沫候補より優れた選挙キャンペーンを行った結果、他の泡沫候補と比較して、それなりの得票数を獲得したということは、その通りだと思います。
ただ、あまり詳細に記述すると問題の焦点がボケてしまうのではないかと思い、あえて、宇野常寛氏の「若者に届かぬリベラル」という論調に合わせて解説してみました。それから、一応、田母神さんも特に有力な支持母体もなく、選挙にも初出馬で、それから両者ともにネット上での若者からの人気があるということで、比較的近い条件であった田母神さんに、なぜこれほどの差をつけられたのか?という観点から分析してみました。
どうもどうも。
取り上げていただき、ありがとうございました(笑)
ちょうどヤンキー経済の原田さんが、うちの候補者をどう見ていたのか?関心があったのでとても参考になりました。
田端さんのご指摘のとおりだと思います。答えは簡単。準備不足、知名度不足でした(その顛末は現代ビジネスの記事読んでね)。そんなメサイアコンプレックスなんて難しいお話を持ち出すまでもありません。
高木さんのご指摘のうち、「居場所を求めていた若者は少数派だった」は、まあ同意です。
しかし「左翼レッテル」を貼るのは、どうかな~?僕ら宇都宮さんたちと同列ってこと?(苦笑)
ちなみに私は「タカ派」ですよ(復古的なものには付いていけないけど)。
家入の周りの側近を皆「サヨク的知識人」と規定されてますが、宇野さんくらいじゃないでしょうか?そういう「右VS左」という、もはや形骸化したフレームワークに当てはめようとするから、おかしくなるんではないかな。
まあ、宇都宮さんの支援者たちも実は当方を読み違えいてて、選挙後、すり寄ってこられる方々もいるんですが(汗)、都市戦略、規制緩和等の政策については、むしろ新自由主義と批判する人もいるくらいです(本人はその気はないですが)。従来型のリベラルとは違いますよ。あー見えてもジャスダック史上最年少の上場起業家なので。
こと「小さな政府」VS「大きな政府」論でいえば、家入は明らかに前者で、宇都宮さんたち旧来型左翼な方々は後者。価値観が多様化して、政治家のポジショニングも切り口によって複雑化しているので、単純に左翼と決めつけるのは違和感ありますね。
もっとも、いくつかご指摘の一部は私自身も感じていたところなので、今後の活動の参考にさせていただきます。ではでは。