誰が橋下維新を支えているのか?~橋下維新問題とネトウヨ問題の類似性~

大阪W選挙は維新の会の圧勝

昨年11月の22日に投票が行われた大阪府知事選・大阪市長選は、維新の松井一郎氏・吉村洋文氏が当選しました。府知事選では、松井一郎氏が自民党の推薦を受けた栗原貴子氏におよそ2倍の得票差を付けダブルスコアの圧勝。大阪における維新の強さを見せつけられる結果となりました。今回は、この大阪維新の強さと、大阪維新を支える主な支持層がどこにあるのか、という問題について分析したいと思います。

維新と大阪都構想の政治的分類

維新の会は、政治的なスタンスとしては、市場経済に介入して規制し、再配分する大きな政府を好むよりも、市場経済の自由競争を許すより小さな政府を好みます。また、平等と寛容を好むリベラルな価値より、または権力集中と不寛容が政治において必要だと考える権威主義的な価値を好んでおり、それぞれ政治的には一般的な分類における「右派」の立場を取っています(参考 『維新の党 ― 右派ポピュリズムはリベラルを超えるか』2015.9.23 大阪にて 立命館大学法学部教授(政治学・地方自治論)村上弘 URL http://satoshi-fujii.com/wp/wp-content/uploads/2015/09/sympo3_murakami.pdf)。

また、大阪都構想は、「2重行政による無駄をなくす!!」というフレーズが象徴するように、基本的には、肥大化している行政サービスのスリム化が最大の狙いであり、これまた小さな政府を目指す経済右派的な改革案でした(少なくとも理念としては)。

さらに、都構想の住民投票の結果では、高層マンション群が立ち並び、比較的豊かな現役
ホワイトカラー層が多い地域で賛成票が多く、逆に 高齢者、貧困層の多い地域で反対票が多かったことからも、都構想の住民投票はシルバーデモクラシーと呼ばれたり、また「生活保護を受けている経済的弱者が都構想を潰した!!」などといった乱暴な言説も一部で見られました。

維新支持層の二重構造

しかし、関西学院大学法学部教授の冨田宏治氏は、この分析のみでは不十分として、維新の支持層は2重構造を持っていると分析します。一つ目の層は30代~40代男性「勝ち組」ホワイトカラー層と専業主婦層を中心とした層です(得票数は、およそ30~40万票と推定)。この層の特徴は、

・これまでの地方選、出直し市長選、国政選挙の支持層
・新自由主義的「改革」への幻惑
・重税感と貧困層・高齢層に自分の税金が回されることへの不満
・地下鉄民営化はじめ、民営化、民間委託などにビジネスチャンス

つまり、自分たちは、税金を十分に負担している割に、あまり福祉等の社会保障のサービスの恩恵を受けられていないと感じているグループです。彼らは、自分たちが思い税の負担を背負い、それらのお金が貧困層や社会的弱者に分配されることを好まないため、政府による再分配を嫌い、市場原理や小さな政府を好みます。冨田宏治氏はこの層を橋下維新と「都構想」のガチの支持層であると分析しており、橋下徹はポピュリストの政治家として批判されていますが、意外にもその最もコアな支持層は、こういった高学歴で裕福なホワイトカラー層が中心となっていると主張しています。

次に、これらのコア層を取り巻いている2層目となる存在が、住民投票終盤で、橋下が「政界引退」を明言し、「橋下徹という政治家を殺さないで」との煽り(ポピュリズム的手
法)に乗せられた20代~30代の若年層(20~30万票)です。彼らの特徴は、

・非正規化、貧困化による閉塞感
・「改革」「既得権益の破壊」を掲げるマッチョなリーダーへの期待

等です。つまり、低学歴で低所得の、一般に考えられるようなポピュリストの政治家に煽動されやすい典型的なB層タイプです(もちろん、近代的なオルテガの大衆論においては、大衆人というものを所得や社会的地位によって分類してはおらず、先の構造改革に賛成するようなエリートサラリーマンタイプもB層に分類することは可能です)

これらの分析から、維新の支持層というのは、高収入の「勝ち組」ホワイトカラー層という最もコアな中心層を、ポピュリストに煽られやすい社会的弱者の貧困層が囲っているという不思議な2重構造になっているというのが冨田宏治氏の分析なのです。
(『豊かな大阪をつくる~「大阪市存続」の住民決断を踏まえて~』冨田宏治 URL http://satoshi-fujii.com/wp/wp-content/uploads/2015/09/sympo3_tomita.pdf

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西部邁

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