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安倍首相は5月28日、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げについて2年半先送りする意向を政府・与党幹部に伝えた。現在の日本の経済状況を考えれば、消費増税などできるわけがなく、当然の決定だろう。ただ、2年半の延期ということはまた将来の増税が待ち構えているという状況には変わりなく、日本には重い空気が立ちこめ、節約ムードは続くのではないか。いっそ、増税中止か、むしろ5%へ戻すべきだった。
財政健全化が遠のくという意見がある。しかし、これほど景気が悪いときに増税を行い、更に景気を悪化させては、財政が健全化することは決してない。ではどうやって財政を健全化するのかという問題だが、2002年と2003年にジョセフ・スティグリッツが来日し政府紙幣を発行し総需要不足を解消せよという貴重な提言を行っている。
一部に政府紙幣の発行は日銀券と置きかわるだけで景気回復には役に立たないという反論があったが、そうならないように制度を変えればよいだけである。彼は江戸時代の通貨発行を引用している。当時は新たに発行された通貨を幕府の収入としたのである。通貨を追加発行し通貨の量を増やさなければ経済は拡大しない。
政府紙幣発行を同様な位置づけにすれば、通貨発行益で歳入を補うことができ、それですでに財政は「健全化」するし日本経済はかつての成長軌道に戻ることが出来る。例えば政府が1兆円札を必要枚数だけ政府紙幣を発行しそれを日銀が引き受けることで日銀が国庫にその代金を振り込めば良い。
しかしながら、政府紙幣に頼らなくても次の2ステップで通貨の量を増やすことができる。
【第1段階】政府が市場で国債を売り、その売買代金で減税や財政資金に使う。
【第2段階】日銀が刷ったお金で国債を買う。
この場合では日銀が保有するのは政府紙幣でなく国債ということとなるのだが、刷ったお金が国民に渡るのは同じであり、経済を拡大させることができる。ご存じのように、異次元金融緩和によって、2013年度から日銀は国債を大量に買っており、第2段階はすでに十分すぎるほど行われているのだ。ということは、残るは第1段階だけであり、国債を適切な規模で発行し減税や歳出の財源として使えばよいだけなのである。その意味で消費増税は現在の日本で全く不必要だ。
国債は「国の借金」だとの主張があるが、国の一部である日銀が買い上げれば、借金は返済したこととなりもはや国の借金ではない。償還の際には返済しなければならないように思うかもしれないが、借換債を発行して「返済先延ばし」を永遠に続けることができる。
このような「安易」な資金調達法は「財政ファイナンス」と呼ばれ、一度この手段を覚えると、何回も使いたくなるので結果として悪政インフレを招くと主張する人がいる。しかしながら具体的に現在の政治家の中で、果てしなく財政を拡大したがっている人がいるだろうか。
どちらを見ても緊縮路線の政治家ばかりで、強いて言えば亀井静香が積極財政かもしれない。それでも彼の考えている財政拡大規模はとても悪性インフレを招くような規模とはほど遠い。10〜20年後には人工知能やロボットが人間の職の半分を奪うと言われている時代だ。通貨発行に関してもっと柔軟な考えを持つようにしないと人類を悲劇が襲うこととなる。
小野盛司
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