12月26日安倍首相が靖国神社に参拝しました。
安倍首相は26日午前、東京・九段北の靖国神社を参拝した。
首相在任中の参拝は、第1次内閣を含めて初めてで、現職首相としては2006年8月15日の小泉首相以来7年4か月ぶりの参拝となる。首相は参拝後、戦争の惨禍を繰り返さないという「不戦の誓い」のために参拝したと記者団に語った。第2次内閣発足以来、首相は、外交問題化を避けるために参拝を自重してきたが、日中、日韓関係の改善が見通せないことから、政権発足から1年の26日、参拝に踏み切ったとみられる。中国、韓国が強く反発している。
首相は午前11時30分過ぎ、同神社に到着。モーニング姿で本殿に昇り、参拝した。
首相は参拝後、記者団に対し、「政権が発足して1年の安倍政権の歩みをご報告をし、二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代を作るとの誓い、決意をお伝えするために、この日を選んだ」と述べた。
(安倍首相が靖国神社参拝…第1次内閣含め初 (読売新聞))
うーん、色々な見方ができるかとは思いますが、正直、最初の感想としては「なんでこのタイミング?」と不思議に思いました。
中には、国際情勢に配慮して比較的海外からの反発を招きにくい絶妙なタイミングであったという意見もありますが、私の目から見ると、なんというか、母親から「勉強をやりなさい!!」と言われ続けながらも、ずーっと遊んでいた子供が切羽詰ってどうしようもなくなって渋々宿題を始めたようなそんな印象です。
私益から出た参拝ではないか
では、切羽詰ってとはどういうことかといえば、やはり第一義には支持率が50%を切ったこと、そして、来年からの消費税増税による景気悪化によりさらに支持率が低下するであろうことが確実視されていると点が大きいと思います。長期政権を目指していた安倍首相にとって、やはりこの支持率が50%を切ったという事実は憂慮すべき状況であったでしょう。
簡単に言えば、こういうことです。それまで、民主党の3年以上に渡る政治や経済の停滞状況から安倍政権に代わり、アベノミクスという経済政策によって高い支持率を得たことで、それまでのいわゆる安倍カラーなどと言われるよな一連の政策及び政策ポリシーを支持していた層の支持をある意味で軽視、もしくは切り捨ててでも政権を維持できるという自信があったからこそ、8月15日や例大祭の参拝は見送ったと、しかし、支持率低下という現実に直面して、なんとかかつての支持層を再び呼び戻す必要性に迫られた、そこで最適であったのがこの靖国参拝ということなのではないでしょうか。
もちろん、これは非常にうがった見方ではありますが、実際に安倍首相が政治の師匠であると述べている小泉純一郎は、一方で政策的にはアメリカの主導のもと新自由主義的な政策を推し進めながら、もう一方で靖国参拝や拉致問題の解決に尽力するなど、現在の安倍政権と非常に似た政策を行ってました。特に靖国参拝も拉致問題も完全に解決しようという意思はほとんど見られず、一言で言えばいかにも中途半端な姿勢でこの問題と向き合っていたという点も非常に安倍首相の現在の状況と酷似していると思います。
未だに、小泉純一郎氏を困難な情勢の中で勇気を持って靖国参拝を断行してくれた勇敢な首相だと評価する声もありますが、一方で、靖国神社を自身の支持率を引き上げるための政治的手段に貶めたということもまた事実でしょう。今回の安倍首相の参拝を私がそれほど評価しない理由の一つは、やはり安倍首相も小泉氏と同様に、靖国神社参拝を支持率回復のための手段に用いようという意図が見え隠れしているという点です。
それから、もう一点
「記者団に対し、「政権が発足して1年の安倍政権の歩みをご報告をし、二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代を作るとの誓い、決意をお伝えするために、この日を選んだ」と述べた。」
というのも非常に気になりました。
靖国神社に祀られている英霊達は、言うまでもなく、日本のために自ら武器を持って戦った人たちでしょう。これらの人たちに向かって「二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代を作るとの誓い」をたてにいくというのは、一体、どのような了見なのでしょうか、普通に考えれば、このように国家のために立派に戦って死んでいった人たちに誓を立てるとするならば、それは「二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代を作る」との誓ではなく、「再び日本が危機に陥ったときは、我々も必ず立派に戦い抜き日本をこれからも守っていく」と誓うのではないでしょうか?素直に解釈するならば、靖国神社に参拝に行ったにもかかわらず、この安倍首相の発言は、ほとんど英霊に対する否定の発言ではないでしょうか?その上、14年度予算案においては、実際には防衛費を増額しているワケです。
一方で、靖国参拝という戦争と防衛費増額という戦争肯定のメッセージを発信しながら、もう一方で不戦の誓いという戦争否定のメッセージという矛盾したメッセージを同時発信しておいて、なんとも思わないこの姿勢。中野剛志さんは安倍首相の発言と行動と政策は全くあべこべだと述べていますが、このような明らかに矛盾しながらもその矛盾に全く無頓着であるというあまりにも鈍感な姿勢や感性が、今回の靖国参拝において非常に分かりやすいカタチで現れたのではないかと私は思います。
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