安倍政権にとって熊本地震は追い風になったかも

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このところ閣僚や自民党議員の不祥事や失言等で安倍内閣の支持率は下降気味だった。2014年度からの消費増税で消費が落ち込み、更に世界経済の不安定さも手伝って円高・株安の流れも生じ、アベノミクスの影も薄くなっていた。また来月の伊勢志摩サミットの前に、来年度に予定されている消費増税を中止するのかどうかの決断が迫られていた。しかも7月は参議院選があり、野党が消費増税反対と主張するのに対し、与党が消費増税実施を主張すれば、参議院選挙は消費増税の是非が争点になってしまうが、与党にしても国民に不人気な消費増税を争点にはしたくないだろう。

さて、安倍総理はかねてから「リーマンショックか大震災並の重大事態が起こらない限り消費増税は実施する」と言っていた。ここで「熊本大震災」が起きた。4月12日に震度7、4月14日には、阪神大地震と同じマグニチュード7.3の大地震が起きた。震度は6強と発表されたが、2日前の地震で停電が続いていて、震度計が動かなかったから測定出来なかっただけで、建物の倒壊率から明らかに震度7だったと専門家は言う。ということは、阪神大地震が2回も起きたことになるし、12日から5日間で震度6以上の大地震が7回も起きたという前代未聞の事態となっている。空港や新幹線、在来線もマヒし高速道路も通行止めが多発しおり、多くの工場で操業停止が続いている。また海外からの観光客も訪日を控える傾向が出ている。そう考えると、景気の下押しが心配されるわけで、このような時期に消費増税ができるだろうか。いや、元々安倍総理は内心では消費増税を中止したいと思っていたのではないか。もしそうだとすれば、胸を張って中止を宣言できるし、野党もアベノミクスが失敗したという追求がやりにくくなる。

それでは政府の震災対応はどうだったろう。東日本大震災の際には、菅政権は震災対応で厳しい批判を受けた。特に原発事故の対応は批判された。過去に経験のない事故であり、対応のやり方が手探りだったこともあるが、管総理が直接ヘリコプターで現場を見に行ったことは、逆に現場の事故対応を邪魔しに行ったようなものと批判を受けた。安倍総理も14日には熊本に行く予定だったが、14日未明の大地震の後、急遽熊本行きを中止し、官邸で指揮を執ったことは正解だったろう。

阪神大震災で村山首相は自衛隊に「救助するな」と命令し、救助に向った隊員は「クーデターを起こそうとしている」として処罰した。東北地震の菅首相もまったく同じ事をした。左翼政権では、自衛隊による救助を軍国主義と見なしている。その結果、原発の大事故を起こしたわけで、初動で自衛隊が動いていたらあのような事故にはならなかった。菅総理が現地視察を終えるまでは、自衛隊は動いてはならないのだそうだ。原発事故の不手際の結果、内閣支持率はどんどん低下した。

安倍内閣の対応は全く逆だ。自衛隊は自分の判断で救助を行ってよく、その活動の承認はその後でよい。政府の地震被害への対応は適切だった。地震直後には、政府は自衛隊350人、警察消防400人を派遣していた。その後17日までに自衛隊だけで2万人に増やし、米軍にも派遣要請をしている。救助を待つ被災者にとって、自衛隊派遣が軍国主義の象徴であろうとなかろうと、命を助けてもらえば有り難いのではないか。
少なくとも、震災対応に関して言えば、現政権のほうが、東日本大震災の時の管政権や阪神大震災の時の村山政権より国民に支持されるのではないか。ということは、熊本地震は安倍政権にとって追い風になったかもしれない。

小野盛司

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