集団的自衛権行使容認の3つのウソ

いや、実際にはウソだらけなのですけど、とりあえず、キャッチ―なタイトルにするために3つのウソとしてみました(笑)

現在、こちらASREADでは、小浜逸郎氏が安保法制に賛成する内容の連載をしています。私個人としては、氏の著作は何冊か読ませていただいており大変尊敬もしております。ただし、今回の安保法制、特に集団的自衛権の行使に関しては認識では全く正反対の主張をしております(氏は賛成であり、当方は言うまでもなく反対です)。せっかくですので、ASREADの読者の皆様には、両者の主張をじっくりと読んだ上で、どちらの主張に分があるかを判断していただければ幸いです(ちなみに、このASREADでは、内容の非常に大まかな方針ではそれなりの一致があるものの、個々のトピックに関しては特定の方針を決定することはありません。繰り返しになりますが、読者の皆様には自由な議論の中で、どの意見が正しいのかそれぞれに判断していただければと思います)。

ちなみに、安保法制や集団的自衛権の議論に関しては、拙ブログ『超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません』(URL http://ameblo.jp/kattann2525/)にて非常に様々な論点から解説していますので、参考にしていただければ幸いです。

今回は3つほど論点を取り上げて解説したいと思います。まず、安保法制、特に集団的自衛権賛成派の人たちがよく主張する「アメリカが危機に陥った際に日本がアメリカを助けないなら、日本が危機に陥った時にアメリカは助けてくれないぞ!!だから集団的自衛権は必要なんだ!!」というものがあります。

一見、非常に正論であるように思えるのですが、私はこのような意見は「全く間違いである」あるいは、「そもそも話の論点が的を外れている」と感じております。何故でしょうか?

まず、この話では、アメリカが軍事的に危機に陥ることが想定されています。しかし、軍事的危機とは、つまり「アメリカ本土が武力攻撃を許す」ということでしょう。しかし、これはアメリカが海洋国家であり他国から海で隔てられている点、アメリカが圧倒的に世界最強の軍事大国である点等から考えて現実にはあり得ない想定です。

このような想定が如何にバカバカしいかを考える上でポイントとなるのは次の3点です。

1 アメリカに攻撃を仕掛ける国は存在しない

2 アメリカが攻撃を受けても防衛のために日本の戦力をアテにすることはない

3 仮に、今後アメリカに攻撃を仕掛けるほどの軍事力をつける国があるとしたら唯一中国だが、地理的に中国とアメリカで戦争が起こって日本が巻き込まれない可能性はほぼゼロなので、どうせ米中で戦争が起これば、日本は個別的自衛権や周辺事態法で対処せざるを得ない状況に追い込まれる。よってこの状況でも集団的自衛議論は無意味。

ですので、アメリカを助けるために、日本が集団的自衛を行使する必要があると主張するなら、「中国以外の国がアメリカに対して戦争を仕掛ける」もしくは、「アメリカと中国で戦争が起こって、なおかつ何故か日本は巻き込まれない」という不可思議な状況が発生しうることを説明する必要があります(唯一例外としては、アメリカから仕掛けた戦闘で劣勢に立たされ、本土への攻撃を許す。という事態があり得るかもしれませんが、まあ、そんなことが起こる可能性はほぼゼロです)。

ここで、「テロ攻撃があり得るではないか!!」という反論もあるかもしれませんが、国際常識的にテロとの戦いに集団的自衛権の行使は不可能だとされています。例えば、日本が韓国人のテロリストに新幹線を爆破されるような事件が起こったとして、もしかしたら日本が報復措置を行う可能性は(限りなくゼロに近いですが)あり得ても、そのような報復措置のために米軍が協力するようなことがあれば大混乱が生じます。

なので、これは集団的自衛権の賛成派がかなり勘違いしているように思えるのですが、基本的にテロや局地的かつ小規模な武力衝突に関しては集団的自衛権を行使することは出来ません(以前、北朝鮮の砲撃に対して軍事同盟を結んでいるアメリカの軍隊は何もしませんでしたよね?)。

したがって、「アメリカが危機に陥った際に日本がアメリカを助けないなら、日本が危機に陥った時にアメリカは助けてくれないぞ!!だから集団的自衛権は必要なんだ!!」という主張に関しては、そもそもアメリカが軍事的に危機に陥る可能性はほぼゼロであり、さらにそのような危機に対して集団的自衛権により日本が有効な手段を取れる可能性はさらに低いという意味において明確にウソであると断じて良いように思います。

さらに補足で説明しておくと、おそらくこのような主張をする人たちは尖閣有事などを想定しているのでしょうが、仮に尖閣で武力衝突が起こった場合、アメリカが尖閣の防衛が自国の極東軍事戦略上重要であると判断すれば、共同で武力攻撃に対処するでしょうが、「あんな小さな無人島のために自国の海兵隊員の命を犠牲にすることは出来ない」と判断すれば何もしません。それは、日本がアメリカの戦争に協力して地球の裏側まで自衛隊を派遣したところで変わりません。この点からも、やはり集団的自衛権を行使を認めればアメリカが日本を助けてくれるというのはあまりにも根拠の乏しい願望であると言えます。

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西部邁

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コメント

    • タバサ
    • 2015年 9月 03日

    最近ロシアとの領土問題の話を見かけるようになってきたように感じるのですが、
    もし今後関係悪化になった場合、その部分から見た場合でも
    集団的自衛権は不要なのでしょうか?
    ロシアをケースにした場合の話も教えていただけたら幸いです。

    • たお
    • 2015年 9月 05日

    この投稿主の投稿は初歩の初歩の議論すら理解していないと思うのは
    私だけでしょうか?

    今回の安保法制の集団的自衛権の議論は限定的集団的自衛権の議論です。

    ①アメリカを攻撃する国と戦う法案では無い。
    ②北朝鮮との有事の際は、以前から周辺事態法で対処可能だとの認識で
    議論しているので、この問題を嘘と言うのは投稿者の理解不足。
    ③個別か集団かの問題は国際法上、集団的自衛権だと見られる行為に対して、
    個別的自衛権だと解釈するのは問題だという前提で議論されている訳で、
    それが個別的自衛権に当たるのかどうかは問題とされては居ない。

    要は今されている議論は形式がされているに過ぎないのですが
    この投稿者は現状の議論すら理解していない訳です。

    実際は殆どが個別的自衛権の問題ですし、現在議論されている
    安保法制の議論では集団的自衛権は実質行使出来ない訳です。

    2chかどこかで賛成派が主張している間違った議論を否定するのも結構ですが、
    現在なされている議論すら理解していないという意味で
    投稿者は何を主張したいのか?

      • SSK
      • 2015年 9月 08日

      反対派で声高に叫んでいる人の多くが、前提や現実を鑑みない理屈を持ち出して、この法案や政権を批難していますよね。
      もちろん、戦争に巻き込まれる可能性が高まるんじゃないかという反対派の感情的な面は理解できるのですが、具体的な議論になると誇大な解釈を感情を盾にぶつけてくるので呆れてしまいます。
      知識や理解度の水準が高く、政治的思想の偏りが小さい人々の”賛成vs反対”議論を関東のメディアでも催してほしいものです。

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