伊集院さん、ぼくは大丈夫なんでしょうか? ドクター非モテの非モテ教室(最終回)
- 2015/7/13
- 文化
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この時の教室内でのぼくの立場は、既に「お父さんのいない可哀相な少年」から「先生を泣かした悪党」。
もし仮に悪者ケーキ100個を皆で分けるとするなら、5つが三浦の分、そして加藤と清原に10個ずつ、残りの75個は俺のものという感じでした。1998年5月11日放送分
博士:えぇと……「悪者ケーキ」って、何?
妹:わからないの? クラスのみんなの「悪さ」の比率をケーキで喩えてるの!
博士:そ……そんなムツカシイことされても……。
妹:深夜放送の空気感の面白さよね、こうした比喩がバンバン直感的に伝わってくるの。
助手:そ……それを文章で伝えることには限界があるんじゃ……?
妹:劇的な投書だけど、一番胸を打つのは読み上げた後の伊集院のコメントよ。
助手:……無視かよ。
妹:長くなるけど、ちょっと起こしてみるわね。
あなた全然正しいですよ、大丈夫ですよ。よく自分のマイナスの部分が実は武器になっていることに気づかない人、いっぱいいるんですよ。
それをあなた乗り越えて5か10になっているからこそ、小学校の低学年にして、みんなの動きが手に取るようにわかるようになっちゃってる*2、その辛さですよ。
(中略)
彼偉い。誰も、悪者にしてません。
加藤君も自分に加勢しようと思った、清原君もそう思ってた。三浦は気づいていないだけだった。そう言ってるわけですよ
あなた一人で悪者ケーキを75個食べてるわけです。あなたその時、おなかが痛かったでしょう。
あんな脂っこいもの、そんなに食べられるものじゃありませんよ、あんな生クリーム風のなぁ~んか駄菓子パンのクリームみたいなケーキですから、悪者ケーキってのは。
これは感銘を受けました、素晴らしいです!
助手:ほ……ホントに長いね……。
妹:このコーナーは『タロウ』の投稿にあるように、投稿者が最後に「伊集院さん、ぼくは大丈夫なのでしょうか?」と問いかけ、伊集院が「大丈夫です」と言ってあげることで完結するの。前回に紹介した放送でも言及されていたけれども、まさに「供養」、「モーニングワーク」なのよ。
博士:「モーニングワーク」というと「喪の仕事」か。えぇと、ものすごく簡単に言うと、親しい者との死別や失恋といったあらゆる「喪失体験」に対して、気持ちの整理を着けること、じゃな。
助手:伊集院はそこを「笑い飛ばそう、ネタにしよう」というやり方で昇華しようとしているわけだね。
妹:そう、「喪の仕事」。それはまさに「喪男の仕事」でもあるわね。
博士:も……「喪男」って何じゃ……?
助手:博士、ネットでは「非モテ男」を「喪男」って言うんですよ。
博士:ふむぅ、喪男の多くは何らかの「喪(=喪失)」を抱えているということじゃな。
妹:驚いた、ドクターの方からそんな風に、理解を示してくれるとは。
博士:ば……バカを言うな、理解なんかしてないやいっっ!!
助手:でもここしばらく博士、単なる質問役でロクに反論もしてないじゃないですか。
博士:し……しかし、既に話題は「非モテ」から遠く離れておるから……(震え声)。
妹:今の話でわからなかったの? 離れているように見えて、それらは全部つながっていたのよ。
博士:ファッ!?
妹:わ……わかってなかったんだ……。
助手:大人びた、内向的なオタク気質の子供は、幼児期に「喪」を体験しがちだ。「喪」を体験した者は大人になりきれず、それ故に「喪男」へと成長しがちだ。だから伊集院は「喪の仕事」をやり直すことで傷を癒そうとしている、ってことですよ。
妹:しかし近年のフェミニズムは、そうした弱い立場の男たちばかりをバッシングする傾向にある。伊集院自身は「弱者男性」のカテゴリーには入らないけれども、伊集院リスナー的な男たちを、彼女らは盛んに攻撃する。それは端的には、彼女らにとっては「男性がその内面を率直に吐露すること」自体が自分たちの内面への攻撃である、と感じられるからではないか。攻撃する時に彼女らが多用する、「ホモソーシャル」、「ミソジニー」といったフレーズはそのことを象徴している……そういうことね。
助手:長々と語ってきたけど、これで一応、まとまった感じだね……。
妹:というわけで当連載も今回でおしまいね。
助手:そうか……そう思うと、何だか名残惜しいね。
博士:あ……! あれは!?
助手:え? あ、火事だ!!
妹:大変! マハリク マハリタ ヤンバラ ヤンヤンヤン!!
博士:おお! 火が消えていく!
助手:妹は魔女っ子だったのか……し、知らなかった……。
妹:正体がバレたから、もうここにはいられないわ……ドクター、お兄ちゃん、さよなら!
――こうして妹は魔法の国へ帰っていきました。
もし、あなたが非モテ心理について、もっと洞察を深めたくなった時は……その時は、伊集院光のラジオを、聴いてみてください。
そして、ある日突然、あなたの学校に毒舌を140字で吐く女の子が入ってきたら……或いはそれが妹なのかも知れませんよ。
=完=
*1 今回もコーナーネタなどについては「深夜の馬鹿力データベース(http://ijuinmania.blog84.fc2.com/)」などを参考にさせていただきました。
*2 大幅に端折っていますが、元の投書では「男子と女子の仲違い」、「一人、状況を把握できていないバカな三浦君」とクラスメイトたちの様子が舌を巻くようなリアルさで活写されています。
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