国家における法と力

「アメリカ様どうかお助け下さ〜い」の不甲斐なさ、みっともなさ

 先日行われた西部邁さんの講演の様子が西部ゼミナールで放映されていました。タイトルは『戦争抑止を集団自衛に頼る属国根性』。タイトルの中に言いたいことがすべて凝縮されているように思います(笑)。結局、西部さんの言いたいことは、日本国憲法前文に対する批判と同じで、「自国の安全と生存」を他国に委ねる卑しい属国根性を批判しているのですね。

 なんとなく、このようなテーマで語る西部さんの話を聞いて、私は、ふと以前BSフジのプライムニュースで行われた西部さんと石原慎太郎氏の議論を思い出しました。その議論では、西部さんが

「アメリカは、日本のような「アメリカ様どうかお助け下さいー」などとやっている情けない国のために、自国の若者の命を犠牲にしてまで尖閣なんて小さな無人島を守るなんてことはしないでしょう」

と述べたのに対し、石原氏は

「いや、そんなことはない。例えば、アメリカは石油利権のためにイラク戦争を戦った。アメリカは利害が一致し、割が合うと判断すれば若者の命を犠牲にしてでも戦争を行う国だ」

と力説していました。

 私は、この石原慎太郎の発言に本当に心底呆れてしまいました。正直に、本音を言ってしまえば、おそらく、石原氏が述べたようなことを尖閣問題について考えている人のほとんどがどこか心の中で考えていたことでしょう。つまり、

「いざという時、(イラクの石油利権に匹敵するような)莫大な利益を提供して、「どうかお助け下さいアメリカ様~~!!」と縋り付けば、もしかしたらアメリカは助けてくれるかもしれない」

ということをです。

なぜ「アメリカ様お助け下さ〜い」は不甲斐なく、情けないか

 では、なぜ、それを誰も主張しないのか?それは一言で言えば、それを主張することが恥であり、それを言った瞬間に「自分が日本人として軽蔑されるであろう」ということを多くの論者が自覚しているからにほかなりません。つまり、誰でも思いつくけど、それを言ってしまったら皆から軽蔑されるであろうと思うからこそ誰も口に出して言うことはなかったというだけの話なんですね。しかし、そういうことを石原慎太郎という保守を自称する政治家が、得意気にテレビの前でベラベラと喋ってしまう。もはや、これは知性の劣化というよりもむしろ、品性の劣化、日本人の民度の俗悪化を象徴しているのではないでしょうか?

 この講演のタイトル『戦争抑止を集団自衛に頼る属国根性』を見たとき、「もしかしたら、西部さんは、石原慎太郎の発言を念頭に置いてタイトルを付けたのかな?」とも思いました。

 そこからさらに続けて、西部さんの批判は国際法を振りかざしたり「日本固有の領土」を主張するような「保守派」の論客にも向けられます。

→ 次ページ「力なき正義、これは虚ろなり」を読む

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西部邁

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コメント

    • アクエリアス
    • 2014年 9月 27日

    ニコ生止まりで燻っていたカツトシさんが本格的に言論活動をしているようで驚きました。私はニコ生時代からカツトシさんのファンですが、これからも見守らせてもらいます。これからも頑張って下さいね。

    • 野比怒羅江悶
    • 2014年 9月 28日

    戦後保守への批判が日に日に切れ味を増しているように思えます。次回も鋭い考察を期待しています。

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