国土強靭化を進めよう!

お金は消えない

政府が国債を発行し、予算として使った瞬間に「お金が消える」と勘違いする方が沢山います。しかし、お金は消えません。

政府が歳出を行えば「社会保障費→国民」「防衛費→防衛産業や自衛隊員」「公共事業費→建設業など」「医療費→病院や薬局など」「国債費→国債を保有する金融仲介機関など」と、必ず政府から民間企業や家計へお金が移動します。

政府からお金を受け取った民間企業(及び従業員)や国民が投資や消費をすれば、他の民間企業や国民(従業員)へお金が循環していきます。

しかし、現在は国内に資金需要が少ないため対外投資や内部留保、貯蓄が増え続けています。貯蓄が増えても、国内金融仲介機関は他に投資先がないため日本国債を購入するという流れになっているのです。

これだけの客観的状況を確認すれば、日本政府が財政破綻する可能性はかなり低いことがわかります。

自由貿易・規制緩和を進めても国民生活は向上しなかった

今の日本の世論は「公共事業の拡大」に否定的です。新聞やニュースを見る限り、マスコミや世論は「TPPをはじめとした自由貿易の促進」「成長戦略などの規制緩和」「財政再建(緊縮財政)」を推進することが正しい経済政策であると認識しているようです。
はたして「自由貿易」「規制緩和」「財政再建(緊縮財政)」を推進すれば景気は良くなるのでしょうか?

実際に過去10年以上、「輸出競争力をつけ、規制緩和をすること」で日本経済を成長させようと、日本政府は「自由貿易」「規制緩和」「財政再建(緊縮財政)」の経済政策パッケージを進めてきました。

その最たる例が小泉政権です。小泉政権は高い支持率を背景に「自由貿易」「規制緩和」「財政再建(緊縮財政)」の経済政策パッケージを強力に進めました。

小泉政権は輸出を伸ばすために、政府短期証券を発行し、日本国内の銀行や保険会社からお金(円)を集め、約48兆円という巨額の為替介入(円売り・ドル買い)を実施し、「デフレ脱却」を名目にして、日本国内に資金需要がないにも関わらず、日本銀行に量的緩和を要請し、円安誘導を行いました。

また、同時に規制緩和を進めました。労働者派遣法緩和によって、製造業や医療などにも派遣社員の使用が認められるようになり、大店法廃止やタクシー台数の制限数撤廃、卸売市場法緩和など多くの分野で需給調整規制の撤廃を進めました。

さらに、公共事業費や地方交付税交付金、国庫支出金、防衛費などを削減し、サラリーマンの医療費自己負担を2割から3割へ引き上げ、年金制度も老齢者控除や公的年金等控除の縮小をするなど、国民に痛みを強いる「緊縮財政」を進めました。

結果はどうなったでしょうか。
輸出総額は2000年51.7兆円から2006年75.2兆円まで急拡大しましたが、就業者数は小泉政権が発足した2001年4月6427万人から小泉政権が総辞職した2006年9月6406万人まで落ち込み、さらに非正規雇用者比率は2000年25.8%から2006年33.2%まで拡大しています。
給与取得者の給与総額は2001年216兆円(平均所得408万円)から2006年200兆円(平均所得367万円)まで落ち込みました。

輸出総額と給与所得者平均年収の推移

輸出総額と給与所得者平均年収の推移

つまり、小泉政権が推し進めた「自由貿易」「規制緩和」「財政再建(緊縮財政)」による経済政策パッケージでは日本国民の所得や雇用を増やすことが出来ないことは、すでに証明されています。

一方で、小泉政権の経済政策は対外投資を2001年391兆円から2006年367.9兆円、大企業の内部留保は2000年172兆円から2006年218兆円と大きく拡大させました。これが「小泉政権は弱者切り捨て政策を進めた!」と指摘される所以です。

当然の話ですが、規制緩和(需給調整規制の撤廃)をしても「需要」がなければ、規制緩和をした業界の競争を激化させるだけです。例えば大店法の廃止によって、食品量販店や家電量販店は店舗の乱立によって、激しい価格競争を繰り広げています。また、タクシー台数の制限数撤廃はタクシードライバーの年間賃金を落ち込ませ、事故の件数が増加する結果となりました。自由貿易を推進し輸出が増え、一部の輸出製造業が活性化されても、同時に輸入が増えれば、別の国内産業は過当競争に巻き込まれてしまいます。また、輸出先の国が何らかの混乱状態に陥れば、輸出元であるわが国は大きなダメージを受けることになります。金融自由化が進んだ現在は国内に資金需要がなければ投資は海外へ向かいます。不況にも関わらず、自ら緊縮財政で国内の資金需要を落ち込ませるのは自殺行為と言えます。

小泉政権が増やした輸出は米国の不動産バブルによる巨大な内需によって支えられていましたが、リーマンショックによって米国の巨大な内需が萎んでしまったため(輸出先の混乱)、日本の輸出製造業が一気に苦境に立たされる結果となりました。

リーマンショック後の日本経済の混乱の原因は、民主党の「コンクリートから人へ」などの間違った経済政策も大きいのですが、小泉政権が進めた「構造改革」による外需依存度の高まりが最も大きな原因と言えます。

→ 次ページ:「問題は負債が増えないこと」を読む

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西部邁

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コメント

    • 魚農虎
    • 2013年 10月 29日

    活かした金のためにもしっかりやってください

    • うずら
    • 2014年 3月 09日

    マスコミやそれに扇動された”庶民派”を気取る人々は、政府による財政支出や公共事業に歪んだ感情を抱き続け、それらを攻撃する機会を常に窺ってきたように思えます。

    口では理想論(実は暴論だったわけですが…)を唱えつつも、公共事業を通じて実生活で果実を得るために、そういった感情を押し殺していたのですが、(なぜか)国民の高い支持を得た小泉政権の誕生を契機に、そのタガが外れ、「自由貿易」「規制緩和」「財政再建(緊縮財政)」といったパンドラの箱を開けてしまったのです。

    愚かな国民は、高い代償と授業料を払い、くだらぬ社会実験を10年以上も続けてきたのですが、未だにその失敗を認めたくはないようです。

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