6月4日に安倍首相を長とする産業競争力会議において、「日本創生のための教育改革」という資料に現行の大学制度を大きく変革する内容が含まれていました。
それは、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の制度化です。この文面だけでは「新しい教育機関が作られる」という程度のニュースだと思うかもしれません。ただ、参考資料内に到底、見逃すことのできない文言があります。
既存の大学等からの主体的な参加・転換の促進。
これまで、少子化に反比例するように大学が次々と創設されてきましたが、この文言は間違いなく既存の大学を「職業教育」という枠組みに組み込んでいくことが狙われています。
職業教育で育つ「職業人」とは?
今回の高度教育機関の改革によって、育成される人材を「専門的職業人」と称しています。そもそも、「高度専門職業人」という言葉があり、イメージとしては医師や薬剤師など、難易度の高い国家試験をクリアした人々です。
では、「専門的職業人」とは一体何者なのか。きちんと定義がされていないのですが、単純に「高度専門職業人」から「高度」をとったと考えると、何らかの専門的な知識やスキルを持ち、それに準じた資格を持って、職業を持っている人のことといえるでしょう。
ここまで考えると、美容学校や看護学校に代表される現存の専門学校で十分ではないかと思うのですが、実は、根本的に考え方を変えてしまう点があります。
大学は専門学校へ、専門学校を大学へ
ここで取り上げている資料の元ネタになったであろう「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方について審議のまとめ」という報告書があります。この中で、今回の改革で根本的に考え方が変えられてしまう面があります。
特に普通科の進路指導においては、将来の職業選択はさておき、高等教育機関、特に選抜性の高い大学への進学を第一としたものにかたよりがちとなっている
(中略)
こうした風潮を打破し、将来自らが就く職業に必要な知識や技術、能力等を身につけるために、職業教育を重視する学校種に躊躇なく進学できるような選択肢の実質的拡大につながるものでなければならない
確かに、自分の中学・高校の時代を振り返っても、東大・京大を頂点とした偏差値の階層で大学受験を考えており、受験で成功か否かは少しでも偏差値の高い大学への合格と考えてきました。
今回の提言で影響を受けるのは、偏差値でのトップ校ではなく、同じ大学という名を冠しているが、毎年の学生集めにも苦労しているような学校に絞られていくでしょう。
一方では、専門学校であっても、一部の大学よりも偏差値が高い学校もあります。そういう学校にしてみれば、大学へステップアップするチャンスがめぐってきたともいえます。依然として、日本の人事制度においては、高卒、専門卒、大卒といった枠組みが基本給やその後の昇進にも影響しており、直近に解決される問題でもありません。
そこに来て、この提言は一部の専門学校にとっては非常にモチベーションの上がるものだったに違いありません。
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