一人で泊まるラブホテルのススメ

 ラブホテル(以下ラブホ)というと、「カップルで入るもの」と思っている諸君がいるとしたら、それはもうおそらく多分確実に、「前近代的な中世のラブホ観」と言わなければならないだろう。

刮目せよ、ラブホテルの進化に

 かつて「連れ込み旅館」とか「アベックホテル」などと言われ、旅館業の中でも「色モノ、キワモノ」扱いされていたラブホは、冷戦崩壊後、デフレ不況の只中をたくましく生き抜き、大きくリノベーションをして現在に至っている。現在のラブホは、シティホテルと比べても全く遜色ないどころか、高級路線、高サービス路線、アミューズメント路線と独自の進化を遂げている事は、実体験としてご存じの方も多いであろう。

 そんな中、特に現在ラブホ業界が力を入れているのが、「単身客」の取り込みである。つまり、男性(或いは女性)一人だけで、宿泊する客にターゲットを絞りつつあるのである。
 旧来、ビジネス利用が多い「単身客」は、大都市や地方都市に出張した場合、駅前の安価なビジネスホテルに泊まるのが一般的であった。

 しかし、多くのビジネスホテルが4,000円~8,000円前後で、画一的で面白味の無いサービス、固定化したチェックイン、チェックアウト時間という「制約」を尻目に、ラブホテルでは同程度かややプラスしただけの値段で、豊富な食事メニュー、アミューズメント性(カラオケ、ゲーム機完備や、化粧品や健康・エステ器具の貸出し、映画の見放題等)、自由なチェックイン、チェックアウトタイム、広い浴室などの高付加価値を備え、「単身客」の取り込みに躍起になっている。そしてその多くが、功を奏しているといえる。

 かつて、ビジネスホテルのライバルは、マンガ喫茶とカプセルホテル(サウナ)、ビデオ試写室と言われたが、高付加価値を売りにしたラブホが、このビジネスホテルを利用する「単身客」のパイを、奪おうとしているのだ。実際、東京都内や関東近郊のラブホの玄関部には「お一人様歓迎」「お一人様OK」の張り紙が急増している。私が常宿にしている茨城県某市の或るラブホでは堂々と表玄関に「お一人様大歓迎!ビジネスに、出張に、お勉強に、息抜きに!」等と書いてあって(勉強というところは若干意味不明だが)、「単身客」を手放しで歓迎する姿勢を鮮明にしている。

 このような記述は、ラブホのメッカとして知られる、渋谷の円山町にも散見される(円山町の或るラブホでは、ビジネス客用にMicrosoft officeを実装したノートPC貸し出しサービスを行なっている)。「二人で行くもの」「カップルで入るもの」「セックスをするための休憩所」というラブホにまつわる固定観念は、近年急速に形骸化していると言わなければならない。ラブホは最早、一人で泊まるのが常識的な時代を迎えているのである。

「当たり前」でない人を受容する、ラブホテルの温かさ

 私など、特に理由もなく「きょうは疲れたな」程度でラブホに単身連泊するような「通」なのであるが、その私がこのような「ラブホフリーク」になったのは、ひとつ、日本のビジネスホテルの教条性が原因なのである。どういうことか。第一に、ビジネスホテル、シティホテルのチェックイン、チェックアウトタイムの硬直性があげられる。日本における殆どの「一般」ホテルは、チェックイン15時、チェックアウトは翌日の10時或いは11時に設定されている(12時だとレイトチェックアウト扱い)。確かに、観光地への遊興目当てに泊まるファミリー層や、ビジネスで利用する単身客には、「15時チェックイン、10時チェックアウト」で全く問題はないであろう。

 しかし、私の場合、重大な問題が存在している。何か。私は中学生の時から「典型的な夜型」で(特にその性向は大学生になってから強くなった)、基本的には明け方の4時~7時に就寝し、起床は昼過ぎ(12時~16時)、という生活をもう10数年に亘って続けているのである。

 例えば、朝4時に就寝、10時間睡眠(私はロングスリーパーなのだ)で、昼過ぎの14時に起床したとする。シティホテル、ビジネスホテルならとっくにチェックアウト時間を過ぎ、部屋にフロントからじゃんじゃん電話がかかってきて睡眠どころの騒ぎではない。その点、ラブホはこの様な「教条的」な利用時間の制限は少なく、例えば「サービスタイム」として平日の朝から夜まで(例:朝6:00チェックイン、夜19:00アウト)を「宿泊」よりも相当安価な値段で提供している事がほとんどなのだ。

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西部邁

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コメント

    • takeke
    • 2014年 4月 23日

    ASREADらしくない軽薄な記事ですね
    そもそも欧州などは深夜営業を禁止する国なども多いですよ
    24時間営業のコンビニなんて欧州では探す方が難しいです
    それと深夜労働勤務者は健康面で日中勤務者よりもリスクが高い
    という統計もあります

      • 菊千代
      • 2014年 4月 24日

      ここは日本だ。欧米ではない。

        • takeke
        • 2014年 4月 24日

        >ここは日本だ。欧米ではない。

        それは私にではなく、この記事を書いた人にいうべきでしょう

        >日本のビジネスホテルの教条性が原因なのである。

        と記事上で批判してる訳ですからね

          • milkcafe
          • 2014年 4月 24日

          いや、どうみても君に向けられるべき台詞だよ

            • takeke
            • 2014年 4月 24日

            なにか批判が多くてびっくりしてるんですが・・・

            私には筆者の主張は
            「日本のビジネスホテルは遅れている(外国等に比べて)規格外勤務の労働者に対応していないから」

            こういう風にしか読めないのですが?

            ここは日本だ!!といのは、私が言いたい台詞なんですが・・・

      • 2014年 4月 24日

      その「欧州は日本より常に正しく素晴らしい」的な発想はどこの宗教の教えですか?
      24時間コンビニないんですか、欧州。それは残念。日本人でよかったよかった。
      深夜勤務はリスクが高い?ほうほう、だから?リスクが高いから深夜勤務は禁止にしろと?
      ではリスクの高い職種も全て禁止にしにければなりませんね。
      今回の記事、僕は面白かったです。まだ1人でラブホに泊まる根性はないですがww

        • takeke
        • 2014年 4月 24日

        私は欧州を素晴らしい、などと一言もいったことはないですね

        むしろ日本は規格外の労働者を許容しない、と日本批判の記事としか思えないんですが?
        違いますかね?

          • 2014年 4月 25日

          じゃあ「そもそも欧州は」なんて例え話がなんで出てくるの?なんで?ねえ、なんで?もしかして「欧州は不便だ。筆者の提言は真に正しい」と言いたかったのですか?それは意図を汲めず申し訳ない。
          だいたい筆者さんはこうすればもっと便利になるのにと言ってるだけでしょうに。それを日本批判と受け取る方がどうかしてんじゃないですか?僕もホテルのチェックイン、チェックアウトの時間にはもっと柔軟性があったらいいのにと思いますよ。

            • takeke
            • 2014年 4月 25日

            あんまりコメ欄にしつこく居座っても迷惑でしょうから
            これで最後にしますが

            日本のビジネスホテルが批判するなら、では欧州では?という事例を持ち出しただけですよ。規格外の労働者を許さないのは、日本のホテル業に限った話ではないと。
            日本のホテルの教条主義だの、規格外の自由な労働者を許さないだの
            これが批判ではなくてなんなんですかね。

            利便性うんぬんですが、ホテル側に余計な負担を課すことは、従業員にとっては重荷になると思うんですがね。過剰サービスや深夜労働などはブラックの温床となると思いますね。

      • iemon
      • 2014年 4月 24日

      筆者がしてるのは、日本の話。
      正直頭の悪い批判。

      • why
      • 2014年 4月 25日

      軽薄?
      書いてる内容をどんな風に解釈するのも個人の自由ですが
      それを元に訳知り顔で斜め上の批判してうんちくまで垂れる方がよっぽど軽薄ですね

    • Buzz
    • 2014年 4月 24日

    ASREADであまり見かけない、軽薄なコメントですね。

    この記事の著者は、「これまでの概念を取り払う」ことを主張しているのであって、欧米との比較で批判しているわけではないと思います。

    「日本の型にはまったbusinessstyleも、サービスの向上には役立ってますよ」という見解であればわかります。

    • BJ
    • 2014年 4月 24日

    ホント、軽薄な記事ですね。

    • 2014年 4月 26日

    別にコメ欄に居座っても誰も迷惑しませんよ。なるほどなるほど、ビジネスホテル批判は日本批判だと。ふむふむ。

    では日本のラブホテルをやたら筆者がヨイショしているのは何なんですか?これも日本批判なんですか?接近サービスの悪さを補って余りあるラブホのサービスと、筆者は絶賛しておりますが…。
    日本批判なら「日本のビジネスホテルときたら!海外のホテルを見習いなさい!」と来ないとしっくりこないでしょう。日本のビジネスホテルを批判しながら日本のラブホテルを持ち上げる。これで日本批判になるんですか?せいぜい業界批判でしょ。
    それにブラック企業の問題ですが、消費者が便利を追い求めたらブラックになるなら、世の中ブラック企業だらけになりますよ。そもそもブラック企業なんてデフレ不況の申し子でしょ。不況の中、消費者が金を出し渋りながら安くて過剰なサービスを求めるから労働者にしわ寄せが来るんですよ。問題は消費者が便利を求めることではなく、デフレ不況です。いい意味でデフレ脱却して需給関係が逆転すればブラック企業は淘汰されていくはずです。労働者は条件のいい所に転職していきますから。転職先がない不景気がブラック企業に大きい顔をさせるんですよ。

    • わん
    • 2014年 4月 29日

    中年バックパッカーの私には、旅人の視点から読むと
    いいこと言っているな。と思いますよ。
    ラブホテル=セックスする場の提供としての本来、経営者やサービス提供側が
    考えている。
    それを別の用途で使うと逆に違う価値もあることに気づく。という点でね。

    まっ。本流でないので、それを多くの人が使うということは無いと思うし
    それを多くの人が使うとまた違う市場が出て来るとも思います。

    • unk
    • 2014年 6月 29日

    ご自身の都合解釈でラブホを薦められてもねー。
    出張先でカラオケだったり、ウェルカムドリンクだったりそんなサービス求めねーよ。
    寝床とシャワーとフリーWifiがあれば十分。

    • 田中
    • 2015年 9月 23日

    深夜にお店が開いてる、深夜労働はあってもいいが、もうちょい割増率を上げてよ
    今の1.25倍じゃなく1.5倍くらい出してあげてよ。

    • 名無し
    • 2016年 1月 21日

    夜勤で出張がある人向けサービスとかマイナーすぎてやる価値ない。

    てかさ、この筆者は宿泊が目的ではないよな?なんか疲れて家まで帰るのだりーからちょっと寄ってこ的なノリでしょ?そんなことするならタクシーでさっさと帰りなさい。

    それとも映画とかカップ麺とかカラオケとか1人では大きすぎる風呂とかが目的なんか?
    だったらフツーにカラオケ、銭湯行って帰りにコンビニ寄って家でネットで映画みればすむはなしだろ?

    コメントについて、日本は職業選択の自由があるのだからやりたいやつがやればいいだけの話。国がとやかくいうことではない。

  1. 2015-11-27

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  5. ※この記事は月刊WiLL 2015年4月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 「発信…
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