ネット選挙の喧噪と現実。選挙の実態を知らなすぎる有識者ら

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あれから3年が

 参院選挙の火ぶたが切られました。野党は共闘を掲げるも具体的な政策は「安倍政権の阻止」のみで、つまりは第2次安倍政権における路線の是非が問われる信任投票です。そして、もうひとつ今回の選挙で問われるのは「ネット選挙」の実力です。

 国政レベルの選挙運動で、ネットが解禁されたのは2013年の参議院選挙。金髪でお馴染みの津田大介氏らが、ネットの影響力が喧伝し、新進気鋭の○○学者といった研究者(多すぎるので割愛)が、「ネット選挙」の可能性を熱く語っていましたが、彼らは選挙の実態を知らなすぎました。

 対する私は某大手新聞社の取材に「ネットは微力です」と答えています。結果は私の勝ち。ネット選挙を喧伝していた人々が「初めてだから」と負け惜しみを述べるも、その後の衆院選挙、都知事選挙、統一地方選挙に各地の市長選、補欠選挙でも微力。そして今度の参院選が初めての「2回目」となり「はじめて」の言い訳は、もう使えません。そこで、今回はネット選挙の実力を検証するとともに、ネット選挙が過大評価された背景に迫ります。

ネット選挙のツートップ

 ネット活用でリードする政党は日本共産党と自民党です。もともと、インターネットは低予算で情報発信できることから「貧者のメディア」と呼ばれ、企業献金や政党助成金を受け取っていない共産党にとって心強い媒体でした。また、全国に散らばる共産党員やシンパによる、草の根(ゲリラ)的な宣伝活動とネットの親和性が高いことも、彼らの活動に適していたのでしょう。2013年のネット選挙解禁以降、「カクサン部」や「雇用のヨーコ」といったのネット展開は、こうした下地があってこそです。

 対する自民党は、潤沢な資金と人材(人数)を投じた力業。細かなことは苦手ですが、いざというときの動員力や拡散力により他党の追随を許しません。

バカ発見器の機能

 その他の野党は十把一絡げ。ただし、政治家のネット利用が、選挙に強い影響を与えつつあります。例えば安保法制の参議院採決で、進行役の委員長の背後から、ボディプレスをかました民主党(現 民進党)の小西洋之議員は、フォロワーに暴動について指摘を受けると「誰にも暴力を振るってない」としれっと反論。その結果、証拠動画は拡散され、彼の人となりを白日の下に晒し続けています。北朝鮮による拉致事件の被害者、横田滋夫妻の写真を週刊誌に無断で公開したと「家族会」から批判されている有田芳生参院議員も、Twitterで意見の異なるユーザーを「ネトウヨ」と罵倒し続け、暴力事件を起こした圧力団体との蜜月ぶりは周知の事実となっています。「個人」の資質をネットが可視化し、有権者に判断材料を提供しているのです。どちらも今回の「改選組」。興味深く見守っております。
 一方、個人としてネットを最大に活用した政治家が、前大阪市長の橋下徹氏です。

ネットの微力は真実

 党の見解を私見で上書きし、罵倒レベルの強い表現を「言論の自由」で正当化します。メディアを挑発し、刺激的なセンテンスを発信することで注目を集める「炎上商法」。「維新」の存在感を高めたことは疑いようがありません。ただし、これは「ふわっとした民意」を操る天才 橋下徹にのみ許された手法で、「ネット選挙」の一般論にはなりません。

 ネット選挙を「微力」と断じた理由はシンプル。橋下徹氏は「盆踊り」に顔を出す政治家を批判していましたが、それは選挙における「常在戦場」の実践で、小さな会合にも秘書を派遣し、傘下の県議や市議を送り込み、生活保護者申請者を役所の窓口に連れていく政治家の振る舞いは、すべて「選挙」のための「集票活動」です。その結果、選挙前から得票数のあらましを予想でき、収穫可能の票数はわずか。そのわずかをネットで奪い合うので「微力」なのです。「政治家は選挙の時しか挨拶に来ない」といった風聞を鵜呑みにする有識者やジャーナリストこそ、選挙の現実を知りません。これも「ネット選挙」が過大評価された理由のひとつです。

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西部邁

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