私の好きな福田恆存

 みなさんこんにちは。
 牧之瀬雄亮でございます。いかがお過ごしでしょうか。

 今回はなんと私の先生の先生の先生(もう完全に関係がないような…)筋に当たる福田恆存さんの紹介いたします。

 彼の経歴等々はウィキペディア等でお調べいただくこととして、この文章を読んだ方が、彼の本を少しでも手に取りやすい気分になるようにと考え、彼の活動、発言からいくつかピックアップしてお伝えしようと思います。

戦後日本唯一の知識人、福田恆存

 福田恆存といえば、西部邁氏をして「戦後日本唯一の知識人」と言わしめた人物ですから、皆さんの中には、「西部さんの本も読むの大変なのにそんな言われようしてる人の本なんか西部邁の三倍くらいむっつかしいんじゃないの?そんな本読むのしんどいし、手に取るのも億劫じゃわい…」と思われ敬遠されている方も少なくないかなと考えています。

 というわけで、雑な言い方をすれば堅いんじゃないかと思われがちな彼が、いかにユーモアのある人であったかということを示すエピソードをまず紹介します。私も大好きな、一番はじめ聞いたとき腹を抱えて笑ったエピソードをご紹介します。戦後やまと言葉の復権の運動があり、今もご存命である渡辺昇一さんが、やまと言葉はただそれだけで美しいのだというようなことを言ったのに対し、恆存は、それより前に彼自身が教鞭をとっていたある授業でのエピソードを紹介します。

 戦時中に、万葉集には言霊が宿っており言葉の分からない外国人にも朗々と読んで聞かせればそのこころは伝わるという講演を聞いて、あなたはどう思うかと訊ねた生徒に対し、恆存は「ちょっと待ってくれ」と間をおいて

「しろたいる/かなたはろかに/そこふかみ/ふとしくふむの/たむろせるかも」

この万葉調の和歌を書いて、「下手だが大体万葉調だ。どうだい、意味はわからなくとも調べの快さが心を打つだろう」と言うと、話を聞いた生徒たちが「ふーむ」とか「なるほど」なんてわかったようなわからない顔をするわけです。

すると恆存、颯爽と脇にこう板書します。

「白タイル/彼方遥かに/底深み/太しく糞(ふむ=フン)の/たむろせるかも」

いかがでしょうか。この記事をお読みになり、もしどなたかが福田恆存の本を手に取り文章に触れ、あまりの論理的かつ冷静な姿勢に少々疲れてしまうことがあるかもしれません。そういうときはこのエピソードを思い出していただければ、もう一行、もう一頁、と読み進められるのではないでしょうか。「白タイル/彼方遥かに/底深み/太しく糞(ふむ=フン)の/たむろせるかも」というやまと(調)歌を真面目な顔をしてひねっている恆存の姿を思い浮かべると、現在我々が触れることのできる文章化された福田恆存像(講演のテープ音源もあるということですが、私はまだ聴く機会を得ていません。是非拜聴致したく、聴かせてやろうというご奇特な方がいらっしゃいましたらば、お手数ですがご連絡ください!是非聴きたいです!)では表しきれない、生きていた彼の醸し出していたであろう話の分からない人ではない気配に触れているような気がしてくるではありませんか。

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西部邁

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