中島岳志の「我々は洋の東西を超えた『保守の普遍的構造』を見出すことができる」発言について

JR大阪駅

 「真正保守」思想を掲げている『表現者』という隔月刊の雑誌があります。執筆者のうちの何名かは、非常に高いレベルでの思想を展開しており、勉強のために購読しています。
 論稿は多岐にわたるため、感心させられるものもあれば、首をかしげざるをえないものもあります。最新の55号で、かなり驚いた論稿があったので、その論理について考えてみることにします。

「普遍的構造」を高々と掲げてしまった「保守」

 その論稿は、中島岳志の『私の保守思想 絶対他力と職人の美』です。論稿の細かい部分について突っ込みたいところは多々あるのですが、まずは最後の結論部分を見てください。

 親鸞の「絶対他力」や柳宗悦の「美の法門」は、保守思想に直結します。日本の宗教思想と近代ヨーロッパの保守思想の対話を通じて、我々は「日本の保守」を確立していく必要があるでしょう。その作業の末に、我々は洋の東西を超えた「保守の普遍的構造」を見出すことができるのです。

 いや、すごいですよ、これ。洋の東西を超えた「保守の普遍的構造」を見出されたそうですよ。
 仮にその普遍的構造を見出せたのだとしたら、保守派と呼ばれる人たちは、この普遍的構造を高々と掲げて洋の東西を超えた思想を展開していけばよいのです。
 ここまで来ると、安倍首相の評価も改めなければならないのかもしれません。最近は、安倍首相の言っていることが新自由主義的であることから、安倍首相は保守ではないという意見も散見されます。ニューヨーク証券取引所で「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」とスピーチしたことで、安倍首相は保守派の顰蹙を買いました。これは、安倍首相が言葉足らずだったことが原因だったわけです。つまり、安倍首相はこう言えばよかったのです。洋の東西を超えた「保守の普遍的構造」を見出したことによって、もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました、と。このように考えれば、安倍首相は立派な真正保守の政治家だと見なせるというわけです。
 めでたし、めでたし。

他の思想と直結させちゃえばいいさ!

 中島によると、親鸞の「絶対他力」や柳宗悦の「美の法門」は、保守思想に直結するそうです。
私はイギリス流の保守思想には散文的健全性(曖昧で冗長な愚鈍さに宿る精神の成熟性)があるため、他の思想との類似性は指摘できても、他の思想と直結させることは暴論になると思っていましたし、そこが保守思想の優位性だと考えていました。でも、その考えは間違っていたみたいですね。
確かに類似性を指摘するのではなく、安易に直結させてしまえば、洋の東西を超えた「保守の普遍的構造」を見出すことができますもんね。さすがですね。私には及びもつかない発想力です。
 近代において、自由主義と社会主義と保守主義が出てきたと言われています。私は保守主義が他の二思想に比べて優位性があるのは、国家というものを重要視し、安易に国境を超えて思想を直結させない点にあると思っていたのですが、間違っていましたね。

→ 次ページ「主義や思想における普遍的構造について」を読む

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西部邁

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コメント

    • ろっく
    • 2014年 7月 28日

    確かに普遍的構造という言葉は、保守に合わない感じがします。感覚ですが。
    保守という言葉があるといくらでも理屈が建てられる、ホシュと言うと何か分かった気になる。
    しかし聖人が、かつて名もなきものに敢えて道という言葉を使い、後世、道という言葉が濫用されてしまい本来の意味が見失われたような難しさが、保守にもあるように思えます。

    • ろっくさん、コメントありがとうございます。

      興味深い意見ですね。
      「道という言葉」については、私も気になっていました。
      そこで日本における思想上の道について、
      「日本式 正道論」という題でまとめていたりします。

      http://nihonshiki.sakura.ne.jp/seido/seido.html

      長いですが(笑)
      興味があるようでしたら、ちょっと覗いてみてください。

      それでは。

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