なぜ「嫉妬」が世の中をおかしくするのか?

「嫉妬している」と思われるのは恥ずかしいから、大義名分を掲げる

では、一体何が問題なのでしょうか。私が思うに、問題の本質は、そのような隠蔽された感情が大義名分を掲げ正義の仮面を被った状態で表現されるということです。

官僚叩き、政治家叩き、あるいはもしかするなら現在インターネット上で流行しているマスコミ叩きなどというものもそれに含まれるかもしれません。

官僚や政治家、マスコミの人間を叩く際に、果たして
「彼らが私よりも優秀な上に、高い金銭的報酬と社会的地位を得ているから気に入らない」
などと言った人間が未だかつて存在したでしょうか。

彼らを叩く文句は決まりきっています。

  • 彼らは、怠け者だ
  • 大した仕事もしてないのに高額な報酬を得すぎている
  • あいつらは苦労をせずに甘い汁を吸っている

先に引用しました『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』では、嫉妬を抱いた人間が、自分自身の嫉妬の感情を隠蔽したまま、どのような行動を取るかについても非常に明快に説明しています。

ほかの人に対して―あるいは自分自身に対して、「あの男はおれより頭が良い(ハンサムだ。金持ちだ。人に好かれているように思える)。だから、気にくわない。」などと言うことができるだろうか?もちろん、できない。そこで人は行動する相手を貶めて、自分の方が優れていると感じようとするのだ。そのためには、相手をけなすという方法が使われる。

「官僚や政治家は私より優秀な上に、高い金銭的報酬と社会的地位を得ているから気にくわない」と言って非難したところでおそらくは賛同する人はいないでしょう。「彼は哀れな人間だ」と同情されるか、さもなくばせいぜい、「彼は自分の感情を包み隠さず吐露する正直な人間だ(しかし、私は彼の感情や行動には賛同しない)」と思われるだけでしょう。

しかし、ここで彼が、そのような醜い嫉妬の感情を上手く包み隠しつつ「奴らは、怠け者だ」「大した仕事もしてないくせに高額な報酬を得すぎている」「あいつらは苦労をせずに甘い汁を吸っている」ともっともらしい理由をつけて非難するならどうでしょうか。おそらくは、多くのルサンチマン人間の関心を惹きつけるのではないでしょうか。さらには、彼らはこう付け加えます「俺たちが、こんなに苦労しているのは、あいつらがろくな仕事もせずに高額な報酬を貪っているからなんだ」と。

ここまでくれば、世の中になんとなく漠然とした不満を持ち、その不満の発散させる対象がどこかにないかと探し続けているルサンチマン人間はイチコロです。「そうか、俺がこんなに苦しいのは、俺がこんなに不満を抱いているのは、裏で甘い汁を吸いながら楽してのうのうと生きている連中がいるからなんだ」と思い、賛同の意を表明することでしょう。

罵詈雑言を浴びせて、優越感を味わう

現在、静かな政治ブームのような状況が発生しており、色々と勉強をしたり、政治活動に積極的に参加する若者が増えているのは事実なようです。政府に対する様々なデモ活動からも見て取れるように、このような状況の中で、強権的な国家権力と抑圧される民衆という対立軸で物事を捉える人々も出現してきています。

もちろん、中には様々な状況を総合的に判断した上で政治活動を行っている方もいるでしょうし、また感情的な動機から政治活動を行うことを全否定する気も私にはありません。

しかし、やはりこのような嫉妬やルサンチマンといった自らの醜い感情を直視することなしに、次々に不満をぶつける対象を見つけ出しては、ひたすら非難罵倒を繰り返すことで、独りよがりな正義を振りかざしながら、密かな優越感を味わったり、カタルシスを得ようとするのはあまりにも不毛なのではないでしょうか。

政治的な活動や言論を行おうとする者は全て、政治や社会に対して鋭い批判的な洞察力を磨くと同時に、それと同じだけ厳しい視線を自らの内面にも向ける義務があるのではないかと思います。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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