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朝日反撃の狼煙
読者を洗脳(啓蒙?)しているつもりが、社員まで洗脳されていたのである。社長が「わが社には間違いがあった」「ここは襟を正して悔い改めていこう」と言っているのに、社員は暴走をやめないのだ。
謝罪した社長や、池上彰氏の原稿を不掲載にした幹部に不満を持つ朝日記者が朝日を飛び出し、産経新聞の記者として「さらば朝日新聞!」というような記事を書くくらいの度胸があればいい。
だが、朝日記者は会社から給料を貰っておきながら、あるいは会社でスマホをいじくってネットに書き込み、あるいは朝日の紙面で読者という便衣兵を使って、パルチザンを展開している。
川柳欄を使っての「工作」については連載「築地をどり」に詳述したが、「声」欄は一見、朝日の今回の一連の報道を批判しつつも必ず一点、「やっぱり朝日が好き」「応援してます」というオチが加えられている。この採用傾向は、つまり、社長が謝ったところで社員たちは根本のところでは悪いと思っていないのだ。
最たるものは九月十八日の「声」特集だ。〈「声」に寄せられた投稿は千通を超えています。多くは厳しい批判です〉と言いながら、五歳の時にお父さんを亡くした高校生のお嬢さんによるこんな投稿を掲載した。
〈小学生のころ、授業で使うために新聞を持って行くと、先生から「朝日新聞なの? すごいね」と褒められた〉
〈毎朝、「お父さん、新聞」と言って仏壇まで持っていくことが、いまも日課だ〉
〈その朝日新聞が誤報で非難されている姿を見ると、悲しく、悔しくなる。(中略)「すごいね」と褒められたあの日のようになるまで、父と一緒に朝日新聞を応援し続けたい〉
お涙頂戴、朝日愛に溢れている。
投稿者に罪はない。純粋な方々なのだ。しかし、それを恥ずかしげもなく選んで載せる編集担当者の神経は何だ。まさに「説教エロ」としか言いようがない。
そして、冒頭の「言論弾圧を許さない」の記事にがる。社内パルチザンを展開し、読者という便衣兵まで使って戦線を拡大していた勢力が、ついに「言論の自由」を掲げ、まるで被害者のような顔をしながら社を挙げて全面的に反転攻勢に出たのである。
十月二日の社説はその狼煙である。
「反日朝日は五十年前にかえれ」。一九八七年五月三日、朝日新聞阪神支局に男が押し入り散弾銃を発砲、記者一人が殺害された。犯行声明に使われた「反日」は、当時はあまり耳慣れない言葉だった。
あれから二十七年。ネットや雑誌には「反日」「売国奴」「国賊」などの言葉が平然と躍っている。社会はますます寛容さを失い、異なる価値観に対して攻撃的になってはいないか
朝日は遠くなりにけり
まさに『週刊文春』や『週刊新潮』、そして『WiLL』を意識した宣戦布告である。
振り返れば、私と朝日との闘争は一九八〇年代後半、『週刊文春』の新米記者として「天声人語は天皇がお嫌い」という記事を書いたのが最初だった。
だがこの頃の朝日との闘いは、いわば誌面上で繰り広げられるプロレスだった。メディアには右も左も、上も下も斜め横もあって当然。『文春』も朝日も、お互いに本気で憎み合っているのではなく、それぞれを正々堂々批判し合っていこう、判断するのはあくまで読者だ、という姿勢だった。
あれから三十年あまり。朝日新聞はあまりに遠くまで行ってしまったものである。
この記事は月刊WiLL 2014年12月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ
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