真実の福音は一つである。
福音がいくつもあるはずがない。
この福音こそ真実である。
すなわち、真なる福音である。
それゆえ、これは福音書と呼ばれる。
別名、神の子の物語とも呼ばれる。
これは、神の子についての福音の物語である。
神の子について。
ある時代のある場所に、一人の乙女がいた。
その乙女は、処女であるのに懐妊したと言った。
乙女には恋人も夫もいなかったため、皆はそれを信じた。
乙女は処女にして懐妊したため、そこに神の意志があると言った。
乙女は一人の子を産んだ。
その子は成長し、十五のとき自らを神の子と名乗った。
神の子の言葉を信じる者が集まった。
神の子は言った。
「神の子は、神の子である。
それゆえ、洗礼は必要でない。
それゆえ、洗礼者を必要としない。
神の子は、血によらず、肉によらず、人によらず、一なる神によって生まれる。
神の子を信じる者は裁かれず、
神の子を信じぬ者は裁かれる。
神の子の教えに従え。
神の子の教えを愛せ。
神の子を愛せ。」
神の子は言った。
「神の子の教えは一つである。
二つの教えを兼ねることはできない。
‘愛’は一つだからである。」
神の子が瞑想していると、悪魔がやってきて神の子を誘惑した。
悪魔 「あなたが神の子であるなら、石をパンにして下さい。」
神の子「石は石、パンはパンである。神の子は、奇跡に頼った布教はしない。」
悪魔 「あなたが神の子であるなら、崖から飛び降りてみて下さい。」
神の子「飛び降りれば私は死ぬだろう。その試みは、神に対する試みにならない。」
悪魔 「あなたが悪魔を拝むなら、すべての栄華を与えましょう。」
神の子は、悪魔を拝んだ。
神の子「さあ、すべての栄華を授けよ。」
悪魔は逃げ去った。
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