「小保方殺し」9つの疑問

疑問3 小保方さんはES細胞を混入する必要があったか?

 疑問2に対して予想される反論はこうだ。

「小保方さんは、胎盤形成までは狙っていなかった。仮に胎盤形成は起こらず、胎児の形成だけが起こっても、遺伝子操作をせずに、酸処理だけでES細胞のような万能細胞を作るのに成功したことを若山教授に認めさせることができれば、それだけで大きな栄誉と地位を得られる研究成果になった。だから、若山教授が胎盤でない細胞塊を胎盤と見誤ったのは単なる幸運だった」

とする仮説である。

 しかし、これもおかしい。なぜならこの仮説は、小保方さんがSTAP細胞が存在しないと思っていることを前提にしているからである。

 考えても見てほしい。STAP細胞が本当に存在するかしないかは別として、小保方さんはSTAP細胞が存在すると思ったから実験に取り組んできたのではないだろうか? 科学上の真実が何であるかはともかくとして、小保方さんはそう信じてきたのではないだろうか?

 小保方さんは、マウスの脾臓から得た細胞を酸で処理すると、細胞の初期化が起こった際に活性化し、細胞を緑色に発光させるOct4─GFPという遺伝子が活性化し、細胞が緑色に発光するのを確認した(彼女が記者会見で言った「STAP細胞作製に二百回ほど成功している」という発言は、この細胞の発光を二百回確認した、という意味であろうと私は推察する)。

 この標識遺伝子によって細胞が緑色に発光したからといって、必ずしも細胞が初期化されているわけではない。細胞が死んでいく際にもこの発光現象は起きることがある。酸処理で死んでいく細胞を見ただけかもしれないことは、STAP細胞の発表直後から散々指摘されてきたとおりである。

 そうした緑色に発行した細胞が初期化された細胞、つまり万能細胞なのか、それとも単なる死んでいく細胞なのかは、最終的にはその細胞を他のマウスの初期胚に注入してどうなるかを見なければ分からないのである。だからこそ、緑色に発光したそれらの細胞を一定の処理のあと、他のマウスの受精卵に注入する実験を小保方さんは若山教授に託したのである。

 注入された細胞がマウスの胎児や胎盤を作り上げればそれは万能細胞だし、作り上げなければ万能細胞ではないことになる。そのプロセスは高度の技術を求めるので、この分野の権威である若山教授が小保方さんの要請を受けた形で、それを試したのである。

 すると、小保方さんが若山教授に渡したそれらの細胞は、別のマウスの受精卵の細胞と混じり合って増殖し、その受精卵を胎児に成長させた(これがキメラである)。それどころか、その混じり合った細胞の集まりはマウスの胎盤まで形成した、と若山教授は判断した。

 このプロセスがES細胞を使った捏造だというのであれば、小保方さんの行動は全く不合理なものとなる。小保方さんは、自らがマウスから得たあの緑色に光る細胞をSTAP細胞だと思ったのではないだろうか? 

 それならば、そう思っているのに彼女がその細胞ではなく(!)、あえてES細胞か、あるいはES細胞を混入した細胞を若山教授に渡した理由は一体、何なのだろうか?

 不眠不休の実験を重ねながら、自分が得た細胞はSTAP細胞などというものではないと思ったのだろうか? 自分が作製した細胞はSTAP細胞などではないと認識したから小保方さんはES細胞を渡したか、あるいはES細胞を混入した細胞を若山教授に渡した、というのだろうか?

 一体なぜ、やってみなければわからないキメラ形成の実験において、初めからSTAPが存在しないと思っているのでなければ意味を持たないES細胞混入をする必要があったのだろうか?

 私のこの問いに対して、「何度やってもうまくいかなかったが、論文発表の期限が迫っていた。それでES細胞を混入させたのだろう」という仮説を言った人がいる。

 しかし、昨年春の騒動のなかで論文撤回に最後まで抵抗し、理研上層部に従おうとしなかった小保方さんのその後の行動を思い出すと、彼女がそのような組織の要請に応じて自分の実験を放棄するとは考えにくい。

疑問4 FACSは役に立たなかったのか?

 これは非常に専門的な問題である。小保方さんが、Oct4─GFP陽性細胞というあの緑に光る細胞を作製した際、亡くなった笹井氏が記者会見で強調したように、理研の研究者たちはもちろん、それを直ちにSTAP細胞という万能細胞であるとは認識しなかった。死んでいく細胞も同じように緑色に発光することがあるからである。

 そこで、理研の研究者たちがその点を確かめるために行った実験の一つが、FACSと呼ばれる実験である。これは、浮遊した細胞を機械で識別する光学的な装置で、こうした細胞を鑑別する際、広く利用される方法である。

 笹井氏はこのFACSを使って、小保方さんが作製した緑色に光る細胞が「死んでいく細胞ではないと確認した」と述べていた。笹井氏のこの指摘は間違っていたのだろうか? FACSは死んでいく細胞と万能細胞を見分けるうえで、そんなに無力だったのだろうか?「捏造」を唱える専門家のなかにも、FACSの信頼性そのものを疑う人は、私がいままで議論した人々のなかにはいなかった。

→ 次ページ「疑問5 ES細胞を若山教授の培養条件で生存させることができたのか?」を読む

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西部邁

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コメント

    • Ochi
    • 2015年 3月 14日

    『「小保方殺し」九つの疑問』は、昨年度12月26日、理研最終報告書によって「小保方さんらによるSTAP研究はES細胞由来によるものであったことが科学的に確認された」ということに対する西岡さんの疑問ということで書かれた文章だそうですが・・・

     文書序盤に「マスコミ」等の問題も述べられているのですが、問題は私もあるとは思いますが、今にはじまったことでもなく、予測できることでもあるわけで、何とも言えないという感想ですね。

    西岡さんは序盤に
    (1) STAP細胞は存在するか?
    (2) 小保方晴子さんは、存在しないSTAP細胞を不正な方法によって捏造したのか?
    と2つに分類していますが、これは至極当たり前の話で、論理的に物事を考えることができる人たちは「小保方さんはSTAP細胞を作ってはいない。ただ、それがSTAP細胞などがないということではない」という風にきちんと認識しているわけで、「万が一、小保方さんがSTAP細胞なるものを検証で作ったとしても、それが研究不正をしていないということにはならない」というような意見は多数あります。
     西岡さんのは管理する某FBグループ等の擁護されている方々には「小保方さんがSTAP細胞を検証で作ったら、また、今後、作ったとしたら、汚名返上できる」というような意見が多数見られます。問題が完全に違います。

     入試シーズンも終わりですが、試験の不正行為と言えば定番の“カンニング”行為があります。試験中、また、その後、カンニング行為が発覚し、不正行為が認定されたとします。で、その認定された人物が「私には通るだけの学力があります。再試験を受けさせて欲しい。」と言って、再試験をしてみたところ、合格に値する結果が得られなかった。それに対し、試験の監督官に文句を言ったり、また、今後、合格に値する結果が得られたらどうするんだ!という、お話にならないほど、トンチンカンなことをこの“STAP研究事件”では起こっているんですよね。

    さて、西岡さんは前の2分類の項目(2)に対して「小保方晴子さんがES細胞を使ってSTAP細胞なる物を捏造した」とする見方に対する疑問について私が思うところを意見sせて頂きます。。

    【疑問1:ES細胞でSTAP細胞を捏造できるのか?】
     ES細胞由来ということは、あくまで、ES細胞その物を使用したとは限らないということです。西岡さんの誤認としては「ES細胞は胎盤を形成しない」ということを絶対視しているところです。

    以前、私が西岡さん丹羽さんの研究を例示した覚えがあるのですが、ES細胞から胎盤を形成するTS細胞のようなTS細胞様のES細胞の話をしたのを完全に無視されているようです。あと、以前と違って、細胞キメラ寄与の向上(いわゆるキメリズムの向上)もあり、若山先生らが誤認する可能性はあると指摘しました。

     調査委員会の報告書でSNP解析など様々な観点から検討した結果、「STAP細胞等はES細胞由来」と判断したわけです。つまり、調査委員会は無根拠でこのような事を判断したわけではありません。西岡さんはこの判断に対して「科学的判断」ではないと仰ってますが、調査委員会の判断は実に科学的根拠に基づき判断されていると思います。

    【疑問2:小保方さんは、胎盤形成を予測したのか?】
     これも前[疑問1]を引きずって、論を進めておりますが、丹羽さんがES細胞にある処理を行うとTS様細胞のような形にできるという研究を行っていたわけで、「STAP細胞もES細胞と同様にTS様細胞に変化させることが可能か」ということで行われた実験系です。ES細胞はOct3/4の発現があるわけですが、Cdx2などの遺伝子の発現は通常ないわけですが、Oct3/4、Cdx2の両方の発現が見られるとES細胞であって、TS細胞であるということが起こり得るわけです。つまり、体細胞由来のSTAP細胞でもそれが起こり得るかと考えるのは至極当然であり、STAP細胞が捏造されたものであれば“ES細胞由来”のものを使うことで誤魔化そうとしてもおかしくないわけです。

     日経サイエンス3月号に登場してくる“大田マウス”ですが、元理研の方で“2,500以上”の薬剤によるES細胞の遺伝子発現の変化、つまり、スクリーニングを行っていて、その中で始原生殖細胞“PGC”と呼ばれる細胞のようなPGC様ES細胞を得ています。丹羽さんの研究もそうなんですが、このような研究が背景にあるということを考察しないと理解できないのかな?という感じを受けます。

     武田先生が「小保方さんは悪くない」とか、「過去の論文で~」とか仰ってますが、通常、ある論文の礎になった考えとかがあるわけで、小保方さんの博士論文に注目が集まるのは当たり前のことなんです。私が丹羽さんの研究や大田さんの研究に関して、気にしているように他の方もその背景を調べるのは普通の事だと思うのですが。。。

    【疑問3:小保方さんはES細胞を混入する必要があったか?】
     西岡さんは「小保方さんがSTAP細胞が存在する」と信じてる前提で論を進めているんですよね。さらに「存在すると思うから実験に取り組んできた」と述べています。ただ、これは“性善説”であって、一方的なものです。「小保方さんがSTAP細胞が存在しない。だから、実験において捏造を行った」という“性悪説”による前提を完全に無視しています。論が中立ではないんですよ。STAP細胞が存在しないなら、“ES細胞由来の細胞”を“ES細胞ではないSTAP細胞”として扱えば、論文のようなデータを作ることができることは既に示されているわけです。小保方さんが身の潔白を証明するには「そうではない。根拠はこれこれこうだ」と主張すべきなんです。

    それで、西岡さんは、その“ES細胞由来の細胞”を使用する動機が小保方さんにないと主張しているわけですが、その根拠が『しかし、昨年春の騒動のなかで論文撤回に最後まで抵抗し、理研上層部に従おうとしなかった小保方さんのその行動を思い出すと、彼女がそのような組織の要請に応じて自分の実験を放棄するとは考えにくい。』というものですが、まさに愚論です。正直、これを言うと私の人格を疑われそうで非常に言いにくいのですが、刑が確定した犯罪者でも『私は無罪だ~潔白だ~』ということがあるわけです。何の根拠にもなっておりません。

    【疑問4:FACSは役に立たなかったのか?】
     理研はBD社のBD FACSAria™ IIを使用しているようですが。まず、機械の信頼性よりも何も、小保方さんの提示するデータの信頼性がないんですよね。実験ノートの記録などがない状況。

    『「捏造」を唱える専門家のなかにも、FACSの信頼性そのものを疑う人は、私がいままで議論した人々のなかにはいなかった』と西岡さんは述べているんですが、それは西岡さんが無視しているからであって、議論自体はあったはずですが。しかも、西岡さんの管理するFBグループで。どういうことでしょうか。
    以前、西岡さんはこんな投稿があったのを覚えていらっしゃらないようで。その後、除名したのは何故?

    『⑤比較評価としてのグラフ
     ●●さんが例に挙げたExtended Fig5gは、それらの比較実験のデータの一部です。
     具体的な実験は「FGF4誘導性幹細胞(FI幹細胞)にJAKを加えることで、ES細胞を死滅させ(つまり、ES細胞のコンタミの否定)、Oct4-GFPの発現とインテグリンα7の発現の関係を調べたわけです。
     ES細胞やOct4-GFPの発現があるわけですが、TS細胞にはOct4-GFPの発現はないため、TS細胞は比較する必要がないわけです。では、ES細胞とFI幹細胞との違いは何か。それがインテグリンα7の発現の仕方に違いが見られたというものです。
     グラフはFI幹細胞が40%以上、Oct4-GFPとインテグリンα7の両方が発現していることを示していて、ES細胞は0.1%未満であったということで明らかに違いが出ているということで、FI幹細胞とES細胞とは別物だと示しているわけです。それで私はその0.1%未満であってもそのグラフを見たいなと思うわけです。
     ところが、FI幹細胞のグラフであるExtended Fig5gは、蛍光補正を行っていないため、もし補正を行ったら、その発現量40%というのが恐らく、1%未満になるかと推定されるので、FI幹細胞とES細胞が別物と示せなくなるわけです。つまり、データの信頼性がないんです。(転載)』

    【疑問5:ES細胞を若山教授の培養条件で生存させることができたのか?】
     西岡さんは『これも、高度に専門的な論点である。正直に言って、私の能力を超えた問題である。だが、これも重要な論点なので、疑問の存在だけは指摘しておく』ということなので、「生存させることはできない」ということを前提(科学的にあり得ないという事を前提)にはしていないので、ただの科学的疑問ということと理解しますが、「小保方殺し」の九つの疑問に加えるべきでなく、西岡さんの理解等の問題です。

    【疑問6:小保方さんはどのようにしてES細胞を入手したのか?】
     まず、西岡さんはいろんな話を聞いた上でこの疑問をお持ちのようです。実際に、外部の人間が研究室内でどのように細胞を手に入れ、使用されており、管理されていたのかは確かに外部の人にはよくわからないところです。これに関しては、私も疑問を持っているところですね。
     調査委員会の報告書から、若山研究室に存在していたES細胞系のもの、大田さんの系列のES細胞がわかっています。

    ・調査委員会の結果→ES細胞由来の結果を得てしまった要因となる人物は不特定。
    ・7月27日のNHKスペシャル→双方の意見を聞いており、留学生は「わからない」、小保方さんは「譲渡された」などと矛盾したような内容なのですが、それを確定するような内容にはなっていない。つまり、NHKがあたかも捏造したかのような話がありますが、小保方さんのフリーザーは留学生が帰国したあとのものなので、中に何が入っているのか、それが留学生のものなのか、わからないのは当然の話なんですよね。小保方さんのフリーザーに留学生のES細胞があったと言われても「?」です。

     これに関しては現在、理研OBの石川さんが「小保方さんを窃盗罪で刑事告発」している状況がありますから、今後、どうなるのか注目ですね。

    【疑問7:「遺伝子解析」は妥当だったのか?】
     今回の“STAP研究”はそういった遺伝子組み換えではない、塩基配列を変えずに遺伝子の発現をコントロールしようとするものです。ただ、塩基配列の違い、発現の違いの両方が混在します(遺伝子の異常コピー)。

     若山先生の解析について、疑義を持っている人がいるようですが、何を言っているのだ?という感じです。
    まず、DNAが一致するという判定の意味をわかっているのかどうか、疑問を感じます。DNAは複製時にいろいろ欠失、転座など遺伝子異常が起こるわけです。つまり、100%一致しなくても同一系統だと判別することがあるということです。一応、ほとんどゆらぎの無い特徴的な遺伝子によるパターン比較によって判別するわけですが、その判別に用いる遺伝子のピックアップによって、異なる結果を得ることがあります。
     若山先生は恐らくそのピックアップした遺伝子に論文に使用しているマウスなどのものを前提に解析したのだと思います。ただ、この手法は論文に使用すべきマウスであるかどうかの判別しかできないということです。遠藤先生の解析によって、Acr-GFPが検出されたわけですが、それによって、マウスの由来を修正したわけですが、このことを「若山先生が解析を間違えた」と判断するのは、それこそ見当違いです。結論は「論文で使用されているマウス由来ではない」という点は何も変わっていないのです。つまり、潔白を証明するには想定されるマウス系統であるということを示さなければ、疑義が晴れたわけではないわけです。

    【疑問8:検証実験は本当に失敗したのか?】
     11月末まで行っていた、STAP現象の検証で小保方さんが行った結果報告によるものなのでしょうが、根本的に西岡さんは間違っています。
    「緑色に光る細胞を得られた。これは小保方さんの担当部分では成功だ」という西岡さんの主張です。

     STAP現象の検証でキメラマウスなどの多能性獲得まで漕ぎ着ければ、全体での検証実験としては成功、漕ぎ着けることができなければ全体として失敗。この認識は正しいと思います。ただ、今回は全体としては失敗しているわけですよ。つまり、これがどういうことを意味しているかを考えなければならないと思います。まず、この結果は小保方さんが得たという光る細胞は“多能性獲得”をしていないということです。つまり、小保方さんの担当部分は失敗なんですよ。

    【疑問9:TCR再構成に関するゲルの加工は小保方さんの意向だったのか?】
     これはわからないですよね。いろんな人が絡んでますから。確かTCR再構成のアイデアを持ち込んだのは西川さんだったかと。ただ、西岡さん自身もあの小保方さんによる“電気泳動法の画像合成”などは研究不正と取られても仕方が無いと仰ってますので、つまり、“小保方さんの研究不正”については西岡さん自身も妥当なところもあるという認識のようです。

    • 井上富夫
    • 2015年 3月 16日

    文中の指摘には納得出来ます。私はエネルギーの視点で身体の機能を
    研究してきました。小保方さんの研究成果は実は細胞の再生メカニズム
    を明らかにした事とその成果を評価しています。
    私は臓器などの細胞は万能細胞は不要と判断しています。
    理由は臓器は患者の臓器の細胞を培養再生する事が適切と判断しています。

    予防策を普及する事が必要と判断しています。

    健康革命では新陳代謝をすれば病気は予防でき、多くの難病も回復出来て
    いまうす。

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