厄介な民間企業信仰~国家戦略において成功した起業家の判断は正しいのか?~

日本を溶かしたいホリエモン

現在の日本は、解散総選挙を終えて、なお、グローバル化かナショナリズムか?という大きな分岐点の前で右往左往しているように見受けられます。今回は、そんな二つの道の間で揺れ動く現在の日本の状況と、今後の進むべき国家の道について考察するためにいくつかの問題提起をしてみたいと思います。

IMAGINEゲスト 堀江貴文(実業家) 後篇

↑こちらの動画はホリエモンと茂木健一郎氏の対談なのですが、この動画の中でホリエモンは「日本を溶かしたい」と述べています。

要は、現在の国民国家のシステムは国民の幸福に寄与していないということで、そのような個人を幸福にしないシステムである国民国家を溶解させたいということだそうです。そのためには、公務員を減らし、法律もどんどん減らしていくことで国家による個人の抑圧を減らし、個人が自由に活動できるようにするべきだというのですが、果たして本当に、国家をなくすことが国民を幸せにするのでしょうか、特に日本をなくすことが日本国民を幸せにするのでしょうか?私には非常に疑問に思えます。

そもそも国家の役割とは?

そもそも、国民国家とは何ぞやと考えた時に、一つはやはり戦力の単位であると考えるべきでしょう。特に、かつて明治時代に欧米列強の脅威にさらされてきた日本にとって、近代化、国民国家化とは、ほとんど防衛体制の強化とイコールであったと言っても過言ではありません。事実、国民国家の形成に失敗したアジア諸国は、ことごとく欧米列強に植民地支配されるという苦難を経験しました。欧米列強の支配に抵抗する手段は国力、特に防衛力の強化であり、防衛力の強化のためには国民国家の形成が不可欠だったのです。

何故中国はアヘン戦争に敗北したか?

では、何故、防衛力の強化と国民国家の形成にはそれほど密接な関係があるのでしょうか?このような問題を考える上で非常に参考になるのは1840年に行われた清とイギリスの間のアヘン戦争です。当時のイギリスは、茶、陶磁器、絹を大量に清から輸入していましたが、銀の国外流出を抑制する政策をとっていたため、輸入の超過分を相殺するためにインドで栽培したアヘンを清へ輸出していました。しかし、清がアヘンの輸入を拒否したためにイギリスは軍艦を中国に送り出しアヘン戦争となります。清は当時4億から5億人の国民がいる当時から最大の人口大国だったのですが、イギリスが送り出した軍艦と4千人程度の兵士に屈服することになります。

これって、少し考えてみると不思議ですよね。よく言われるのは技術力の差というものですが、そもそも数十隻程度の軍艦で4億や5億の国民を全て打ち倒すことなど出来るはずがないわけです。しかし、現実にはイギリスは数十隻程度の軍艦と4千人程度の兵士を送り出すことで清に打ち勝ってしまっています。

何故、清は敗北したのか?ここで出てくるのが国民国家という問題です。実は、国民国家が成立していなかった当時の日本や清には、そもそも戦争遂行能力がなかったのですね。まず、近代国家ではないので兵隊が動員できません。さらに、戦費の調達も出来ません。それに対して、イギリスはアヘン戦争で艦隊を動かすことを議会で決定しています、国民の総意で戦争をしているのです。なので、仮にイギリスが送り出した何隻かの軍艦を清が打ち倒しても、もう一度軍艦を送り出すことができ、それをさらに打ち倒されても何度でも送り出せる上に、そのための資金を税金を徴収したり、国債を発行することで国中からお金を集めて戦争を遂行出来ます。つまり、国民国家が成立していたイギリスは、中央政府が権力を用いてマンパワーや資金を動員する体制を持っていたのに対して、日本や清はそのような体制を持っていなかったのです。

→ 次ページ「国民国家のみが、バラバラの個人では乗り越えられない困難に対抗できる」を読む

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西部邁

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コメント

  1. 確かに、根拠のない「民尊官卑論」は国家を弱体化させてきましたね。

    そのくせ、困った事が起きると、「政府が明確なガイドラインを示すべきだ」なんて平気な顔で要求するのですから、本当に賤しい連中です。

    • 森坂
    • 2015年 1月 24日

    カツトシは古谷の訴訟を「話にならない」と豪語していたが話になるから。内容証明も来月初旬には届くし覚悟してるんか。カンパの件でも県警が動き始めてるし何を話して何を黙秘するのかも考えてるんか。お前の人生が栄えようが転落しようがどうでもいいんだけどね。

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