※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
他の記事も読むにはコチラ
通貨増発を一度行うと、麻薬中毒患者のように、通貨発行がやめられなくなりハイパーインフレになるという説があるが、戦前の高橋是清は通貨増発を行ったがインフレは抑えている。戦後のインフレは敗戦で極度の物不足に陥ったことが原因だった。
では平和で物余りの時代に果てしなく通貨発行をしたくなるような状況は訪れるのだろうか。公共事業も働き手に限界があり、世界大戦にための財政拡大ほどの規模で予算を拡大しようとは誰も考えない。
福祉、医療、介護、教育、農業、研究開発など考えても、予算拡大には限度があり、人手不足が深刻化しインフレ率が高すぎるようになったら、それ以上の通貨増発に政治家や国民の支持は得られるわけがない。
例えば、安倍首相が一度ヘリマネを実施したとしよう。ああ、こんないい方法があるのなら何度でもやろうと思うようになり、果てしなく繰り返すようになるだろうか。実は現在でも国債を発行すれば、異常なほど低い金利で、いくらでも市場で売却することができ財源はいくらでも確保できる。
実際政府は今なら低い金利で国債を発行できるとして「前倒し債」を前年度に比べ46%も多く発行している。2016年7月末で日銀の国債保有残高は373兆円であり毎年80兆円だけ保有残高を増やしている。政府が国債を増発すれば、事実上ヘリマネと同じことを行っていることになる。
つまり今でも国債を増発して財政支出を果てしなく拡大できる。それを安倍首相はできるのにしないのは国民の理解が得られていないと判断しているからだ。ということは、事実上今でもヘリマネを行っているが、国民の理解が得られない限り安倍首相は今後果てしなく財政を拡大することはないということを意味している。
そもそも高橋是清はヘリマネに味を占め、ヘリマネを果てしなく繰り返そうとしたわけではない。景気が回復しインフレ気味になった後は、財政拡大を抑えようとしている。更にインフレを抑えるため日銀保有の国債を市場で売却している。
高橋是清が暗殺された後に大蔵大臣になった馬場?一は軍の要請で国債を増発したが増税も行っているのだから馬場もヘリマネ中毒になったわけではないしインフレも抑えている。
軍が国債を増発させて軍事費をまかなったのは何も高橋是清の国債日銀引受に味を占めてそれを繰り返したということでも無い。軍はその前から朝鮮や満州等で通貨を発行し戦費を確保している。それと同じことを本土でも行っただけだ。
江戸時代、明治時代等、ヘリマネに相当する通貨増発は繰り返し行われていたのであり、高橋是清が最初ではないし、単にそれに味を占めて国債発行が繰り返されたわけでは無い。
戦後インフレになったのは、高橋是清のせいではなくて、米国軍の爆撃で日本が焼け野原になり、生産設備が破壊され極度の物不足になったのが原因である。食糧不足で餓死者まで出るようになったとき、人は闇市でわずかな食料を奪い合った。その結果当然物価が上がった。復興債の日銀引受が更にインフレを加速させた。
これは傾斜生産方式と言われ、日本経済を復活させるために基礎となる石炭・電力・鉄鋼・海運などを中心に基幹産業の復興を最優先した。その結果、生産は急回復し、みるみる生活は豊かになり、驚異的な経済成長へとつながっていくのである。インフレになれば生活は破壊されるという主張は間違いである。
物余りの現代、ハイパーインフレになるほどの深刻な物不足になるのだろうか。100円ショップや大型スーパーに行ってみればよい。おびただしい商品が並んでいるし、どの棚も空になるほどの、つまり終戦直後のような深刻な物不足が将来訪れるわけがないことは理解できるだろう。
我々の質問主意書に対する政府の答弁書で極度の物不足にならない限りハイパーインフレはあり得ないと認めている。
つまり「ヘリマネならハイパーインフレ」は時代錯誤の考えであり終戦直後のインフレはもう来ないのである。
小野盛司
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
本当にその通りです。
机上の空論をゴチャゴチャとしたレトリックで飾り立てることしか頭にない「経済学者」は、実体経済というものを全く考えてないんですね。
どうやって、この真っ当な経世済民の思想を世に広めていくか、それが今後の課題ではありますが。