経済政策、その間違いの歴史~何故、日本と世界は道を誤ったのか?~

資本主義の終焉を予言したマルクス

かつて、思想家であり偉大な経済学者でもあったカール・マルクスは、『資本論』の中で、資本主義の終焉を予言しました。しかし、現在において、その予言は未だ成就しておりません。

マルクスの資本主義批判は根本的には、構造的な批判であるというより、むしろ倫理的な批判であります。つまり、マルクスの考え方では、資本主義は、その構造的欠陥ゆえに、というよりは、それはあまりに疎ましく不正であるからこそ長続きすることはないと考えたのです。

資本主義は労働者を強制的に生産手段から疎外し、ひいては人間らしさから疎外し、搾取されやすい存在にする。資本主義は「人間の生産的な生活」を「金儲けのシステム」の犠牲にし、使用価値を交換価値の犠牲にする、とマルクスは主張した。この点でマルクスは、アリストテレスの流れを汲むと言える。経済史家のリチャード・ヘンリー・トーニーは、マルクスを「最後の教育者」と呼んだ。

『じゅうぶん豊かで、貧しい社会 理念なき資本主義の末路』 著 ロバート・スキデルスキー&エドワード・スキデルスキー 訳 村井章子)

社会主義の父マルクスは、何を説明し、何を説明出来なかったのか?

たしかに、マルクスはなぜ資本主義が終焉するのか?という問題について構造的な解明を試み、それらについて非常に多くの説明を行いました。しかし、それでも、マルクスは、資本主義が終焉すべき説得力ある理由は提出しましたが、終焉する理由は提示できませんでした。また、同時にマルクスは資本主義がなぜ必ず滅亡しなければならないか。という問題については、説明しきることが出来ませんでした。

マルクスの説明はこうです。「資本主義は滅亡に値する、搾取した者は搾取されるに値する、さもないと正義が否定されることになる。」しかし、具体的に、何がどのように契機となって終焉を迎えるのかについて、マルクスは生涯の大半を費やして解明しようとしながら、ついには解明することは出来ませんでした。

→ 次ページ「マルクスの黙示録は外れた」を読む

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西部邁

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コメント

  1. 高木克俊様

    世情に流布している「マルクス主義」について、マルクス本人が、「これがマルクス主義なら、俺はマルクス主義者ではない」と言ったという話が伝わっています。

    資本主義の否定としての社会主義ではなく、資本主義の完成としての社会主義、がマルクスの考えた社会主義であると私は考えています。

    以下のものがご参考になればと思うのですが。

    8.試行第六八号 1986年2月10日発行 より転載
    http://homepage2.nifty.com/okutamahomeless/jokyo8.htm
    (文中、「主催者」とあるのは、先年亡くなられた吉本隆明氏のことです。)

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